事前に知れば怖くない!はじめての税務調査の前に知っておきたい3つのこと

事前に知れば怖くない!はじめての税務調査の前に知っておきたい3つのこと
事前に知れば怖くない!はじめての税務調査の前に知っておきたい3つのこと

起業すると、いつかは経験することになる税務調査。真面目に申告していても、いざ税務調査となると、何を聞かれ・調べられるのか、どんな人が来るのか、色々なことが不安になりますよね。

今回の記事では、
①税務調査はどのような目的で行われるのか
②税務調査はどのような流れで進むのか
③税務調査では何がチェックされるのか、事前に準備することは何か
という3つのポイントを中心に解説していきます。

事前知識がないと不安も大きくなるものです。この記事を読んで、疑問に思っていることや不安に感じていることを払拭しましょう。

税務調査は、大きく二つに分かれます。

一つは、国税局査察部によって行われる「強制調査」、もう一つは、申告書の内容を確認するために行われる「任意調査」です。

強制調査

ドラマや小説などで「マルサ」という言葉を耳にしたことはありませんか?この「マルサ」は国税局査察部の通称で、強制捜査はこの国税局査察部(犯則調査機関)によって行われる税務調査です。

強制捜査では、脱税の疑いがある納税者に対して事前に内偵を行い、確固たる証拠を得たのち、裁判官の許可状をとったうえで、一斉に立入捜査・証拠資料の差し押さえなどを行います。これらは主に刑事告訴を目的として行われます。

任意調査

納税者の申告書に誤りがないか確認のために行われる調査で、一般的な税務調査はこちらを指します。おそらくこの記事をご覧のほとんどの方はこちらに該当すると思います。

「任意」という名前ではあるものの、税務調査官には質問検査権という権利があるため、原則として、正当な理由がなく調査を拒むことはできません。

この任意調査では、申告書などの資料をもとに税務署内で準備調査を行い、必要があれば、納税者のもとに赴き「実地調査」を行います。

実地調査は「一般調査」「現況調査」「特別調査」「反面調査」の4つに分けられます。

一般調査

税務署から事前に調査実施日の連絡があり、日程や場所の調整なども可能です。主に総勘定元帳と請求書、領収書などの書類の確認、納税者への聞き取りにより行われます。

現況調査

飲食店など現金商売の事業を対象に行われる調査です。レジや金庫の現金確認をする必要があるため、現金を隠すなどの不正を想定し、事前通知はされず、抜き打ちで行われます。

特別調査

準備調査の後、一般調査では調査が不十分であると判断される多額の不正などがある場合や、事業規模が大きい場合に特別調査部門が行う調査です。事前通知や日数制限もなく、細部にわたり調査が行われます。

反面調査

調査の対象が納税者ではなく、納税者の取引先に対して行われる調査です。
納税者の帳簿に記載された取引の裏付けをとるために取引先に対して調査します。

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税務調査の流れについて

任意調査の場合、準備調査の後、税務署から事前通知があり、実地調査へと進みます。

具体な流れは、一般調査を例にして説明していきます。

税務署からの連絡

一般調査の場合は、まず、税務署から税務調査の日程と、税務調査を行う場所の連絡があります。税務署から日程について提案がありますが、都合が悪ければ、基本的には変更に応じてくれる場合が多いです。

税理士と顧問契約していて、税理士が確定申告書に「税務代理権限証書」を添付していれば、この連絡は、まず税理士側に来ることがほとんどです。その場合、実地調査は納税者の会社等で行われるので、当日立ち会いに同席する税理士とお互いのスケジュールを調整したうえで日程を確定させましょう。その際、事前に準備しておく書類や、立ち会いで発生する報酬などを併せて確認しておくとスムーズでしょう。

事前通知

日程が決まれば、税務署から税理士ないし納税者へ事前通知が行われます。国税通則法の定めにより、法人税・消費税・源泉所得税の対象となる税目と調査対象の期間について知らされます。

基本的には、ここで通知された税目・事業年度以外のものは税務調査で見られることはありません。一般的に3期分の申告書をみることが多いようです。

税務調査の日程

税務調査は、一般的には調査官が1~2名で来ることが多く、概ね3日間程度の日程となります。取引量が少なかったり、スムーズに進んで2日間で終了する場合もあります。

以下は、初日から3日目までの日程をまとめたものです。

初日

初日の午前中は、主に納税者への聞き取りが中心です。

創業の経緯、創業から現在までの会社、事業の概要、代表者の略歴に始まり、現在のビジネスモデル、売上から入金までの流れや、仕入れや経費の発注から支払いまでの流れなどの聞き取りが行われます。

午後からは、総勘定元帳を中心に、請求書や領収書の確認が行われます。時折、経理処理についてなど質問があることもあります。また、証票類はコピーを取られることもあります。

2日目

2日目は午前、午後とも初日の午後と同じような内容です。

調査官による書類の確認作業が粛々となされていきます。1日目の調査中の質疑にて、直ちに確認することができず、持ち帰りとなった事項に関しての具体的な説明が求められる場合もあります。

3日目

3日目の午前も前日同様の内容です。

3日目の午後には、疑義がある点に関する具体的な質疑が行われます。証拠となる資料などを提示のうえ説明を行うといった対応が求められます。

なお、ここで挙げられた事項がすべて修正申告となるわけではありません。軽微なものなどは、この場の指導にて終わることもあります。

また、実地調査は三日程度で終了しますが、直ちに結論が出るわけではありません。

税務署内での審議

調査官が調査した内容は、税務署に持ち帰り審議されます。追加で不明点などがある場合は、調査官から電話での質問が来ることもあります。

会計や税務処理の専門的な内容は、税理士に尋ねた方がスムーズであるため、追加資料の依頼や質問等も税理士に直接依頼するケースが多いです。

修正申告

税務署内での審議が完了したのち、税務署より税理士ないし納税者へ電話等で連絡がきます。
重大な場合は税務署や納税者の事業所で面談の上伝えられることもあります。

税務署から伝えられる内容としては、否認項目等の理由・金額と、それについての修正申告書の提出依頼になります。

修正申告書を提出し、納税がすめば、税務調査は終了となります。

法人税、所得税、消費税、相続税等は税法上、申告納税方式で、納税者の申告による課税することになっており、あくまで主体は納税者となるので、基本的には「修正申告書の提出依頼」という形式をとることになっています。

仮に税務署側からの指摘に納得がいかず、修正申告書を提出しなければどうなるのかというと、税務署側から「更正」という処分で所得、税額が確定されます。

もしこれ対して不服があれば、国税不服審判所への異議申し立てを行うという流れになります。

税務調査の対策について

次に税務調査で必要となる対応や準備について解説していきたいと思います。

納税者側の立ち会い

代表者同席の必要性

初日の聞き取りの際と、最終日に税務署からの指摘を受ける際には代表者の同席が求められますが、その他の調査官が机上で調査する時間などは、特に常駐する必要はありません。

ただ、調査を進めていく中で、代表者しか知り得ない事項への質問などが要所要所で出てくる可能性はあります。その対応に備えることができれば外出等も問題ありません。

経理担当者の同席の必要性

調査官の調査時には、一番実務に精通していると思われる経理担当者に対し、書類の提示や日常の経理処理の説明などが求められます。必要なときに対応できるのであれば、調査スペースの近くで通常業務を行っていても問題ありません。

税務調査でよく見られる項目

税務調査で、重点的に見られるのは、勘定科目でいうと売上、人件費、外注費、交際費、支払手数料などです。必ず見られているといってもよいでしょう。

売上では、計上の流れや証憑のルールを含めた取引の流れや、主要取引先などについての確認が行われます。また海外取引がある場合に関しては、取引先との関係や消費税の処理なども細かく確認されます。

人件費については架空人件費の問題もあるので、従業員名簿などもしっかり確認される可能性があります。

外注費、交際費、支払手数料などにおいて、特に注視しているのはそこに記載された個人名です。相手が個人の場合は、相手が事業者・法人の場合とは異なり、収入に対しての申告がされていないケースがよくあるからです。また、個人で申告をしないことに関連して、キックバックなどの疑いをもって、個人との取引がチェックされていきます。

売上除外・経費の架空計上などは、悪質と捉えられ重加算税の対象になります。これらは経費計上の解釈上の違いなどによる意図しない間違いとは全く質が違うので、安易な考えで売上を隠したり、架空の経費計上するようなことは絶対にしないようにしましょう。

事前に準備しておくもの

税務調査で事前に用意しておくものは、事前通知で指定された事業年度分(概ね3期分になることが多いです。)の以下の書類を用意することになります。

総勘定元帳、請求書、領収書、クレジットカードの明細、現金出納帳、預金通帳のコピー、扶養控除等申告書、源泉徴収簿、取引先との契約書、議事録、建物賃貸借契約書等

税務調査でやってはいけないこと

税務調査となると調査官に攻撃的な対応をとる人もいますが、攻撃的な対応や非協力的な姿勢はやめましょう。高圧的な態度をとっても、調査官の心象を悪くするだけで、プラス要因は一切ありません。

上述した通常の税務調査(任意調査の一般調査)はあくまで、提出された申告書の確認という趣旨で行われるため、過度に心配をする必要はありません。調査官の求めに応じて協力的な姿勢で臨みましょう。

協力的な姿勢で臨むとはいえ、聞かれてもいないことを自ら積極的に話して、必要以上に調査官に情報を与える必要はありません。スムーズに調査を進行させるためにも、調査官の求めに応じて対応するようにしましょう。

その他の注意点

自社でWEBサイトを所有している場合、調査官は高い確率で閲覧しています。最新に更新されていればよいですが、しばらく更新していない場合など、現在行っていない業務や、閉鎖した支店、営業所等の記載があると必ず質問されます。

WEBサイトは、常日ごろから更新をしておきましょう。

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最後に

はじめての税務調査を迎える皆さんの不安を拭うために、税務調査の目的・流れ・内容や準備に関して紹介してきました。

通常の税務調査は一定サイクルで巡ってくるため、不審な経理処理や悪質な行為をしていない場合でも、いずれ調査はやってきます。

調査の結果、修正申告が発生するかもしれませんが、その場合であっても「未来でいずれ指摘されるであろう箇所を、より早いタイミングで正しい状態にすることができた」と、税務調査の機会・結果をポジティブに受け入れましょう。