創業後に顧問契約する税理士事務所の選び方9つのポイント

スタートアップが事業開始とともに税理士事務所と顧問契約するときや、企業がすでに取引している税理士事務所を何らかの理由で変更するとき、どのような基準で税理士事務所を選ぶかはとても大事です。

税理士事務所にも色々な規模や特徴があるため、間違った相手を選んでしまうと後で後悔することになります。

まさに結婚相手を選ぶのと同じで、間違ったタイプの会計事務所を選んでも簡単に変更することも難しく、のちのち会社の実務まで悪く影響してくるのではないでしょうか。

それだけに顧問契約する税理士事務所の選び方はとても大切です。

そこでこの記事では、適切な税理士事務所と顧問契約するための選び方の基準やポイントを解説します。

自社の現状を正しく分析して、また解説する基準・ポイントに沿って税理士事務所を選べば、きっと自社に適切な会計事務所に巡り会えるはずです。

税理士事務所の選び方の基準・ポイントを紹介する前に、そもそも税理士事務所とは何か、顧客にとって税理士事務所とはどのような役割を負っているのか、その概要を紹介します。

税理士事務所の概要と役割

税理士は法律により、原則、税務に関する業務を独占して行うことを許された唯一の存在です。

そして税理士事務所とは、税理士資格を持った方が代表創業者となって会社・個人事業主等の顧客に対して税務に関するサービスを行う組織のことを言います。

税理士事務所には、スタッフ5名以下の零細事務所から、スタッフ100名以上を抱える大規模事務所まで様々あります。そのため事務所の規模や特徴で提供できる税務サービスの種類も千差万別です。

また相続、医療、不動産などに特化した税理士事務所や、事務所創業者ほかスタッフの大半が40歳代以下の若手で構成されている新興の税理士事務所も存在します。

そのため税理士事務所を選ぶ際には、最初に事務所の規模や特徴を知っておくことはとても大切な判断要素になります。

税理士のなり方

税理士事務所を選ぶ上で、その会計事務所の代表である税理士がどのような経緯を経て税理士になったかを知っておくことも大事です。

なぜなら税理士事務所の特色は、良くも悪くもその代表税理士のキャリアが色濃く反映されるからです。

一般的に税理士のなり方には以下の3通りがあります。

ケース1:一般的なケース

国の実施する税理士試験を受けて合格し、会計事務所に就職して通算で2年間の実務経験を経た後、日本税理士会連合会に入会してその名簿に登録される。その後、続けて税理士事務所にスタッフとして勤務するか、独立して開業するパターン。

ケース2:税務署出身のケース

税務署に職員として21年以上勤務して、退職後、税理士資格をもらって税理士事務所に勤務するか、独立して開業するパターン。

ケース2:他士業出身のケース

先に国家試験を受けて弁護士、または公認会計士の国家資格を持ち、その後日本税理士会連合会に入会してその名簿に登録され開業するパターン。

上記のように同じ税理士と言ってもそれぞれ税理士のなり方は全く違っているので、これから顧問契約しようとする税理士事務所の代表者がどのような経緯で税理士になったか、事前に知っておくことは選ぶ上で不可欠の要素になります。

税理士事務所の役割

前にも述べたように、税理士は原則、税務に関する業務を独占して行うことを許された唯一の存在です。

もし無資格の方が顧客に税務の取扱いをしたら、仮に報酬を受け取らなかったとしても法律違反となり罰せられます。

このように税理士事務所には法律にも明記された確固とした社会的役割が与えられているので、税理士自身、また税理士と顧問契約する経営者も、その点を最初にきちんと厳格に理解しておけば、相互の関係も長続きするし、最終的に双方の利益につながってきます。

税理士事務所が実務を通じて関わる顧客の多くは会社等の法人です。個人では、個人事業主を除き、税理士事務所と関わりを持つことはあまりありません。

あえて個人で関わりを持つとしたら、相続・贈与税関係に強みを持つ税理士事務所だけでしょう。そして法人でも税理士事務所と関わりが強いのは、日本の法人の99%を占める中小企業です。

ではその中小企業と深く関わりを持っている税理士事務所の役割とは何でしょうか?

以下でその主な役割を5つ紹介します。

役割1:記帳代行

税理士事務所は、顧問契約した会社・個人事業主から事業の収支や財務に係る資料を受け取り、定期的に記帳代行を行っています。

また顧客自身で自社のパソコンに日々の会計入力をしているときには、税理士本人または事務所スタッフが定期的に顧客先を巡回して取引の入力内容をチェックしています。

役割2:申告代行

税理士事務所は、事務所または顧客自身が行った会計入力を1年間繰り返した後、その数字を元に決算報告書を作成する役割を担っています。

もちろん確定申告の方法には、個人で直接税務署に出向いて申告する、電子申告を利用するなど方法は色々ありますが、税理士事務所には、顧客の申告前の各種準備も含めてあらゆる税務の代理ができる役割が与えられています。

役割3:会計指導

税理士事務所は、顧客の日々の経理会計業務について指導する役割があります。

税理士は推奨する会計ソフトを利用して顧客に会計入力を指導する一方、経営者や経理担当者は指導に基づき日々の業務に係る数字をパソコンに入力・仕訳します。

また会計指導が定着して会社で月次決算までできるようになれば、月次残高試算表などを利用して、税理士から直接、資金繰り、経営計画、節税対策などのアドバイスが受けられるようになります。

役割4:税務相談

税理士事務所は会計指導と並行して顧客からの税務相談にも重要な役割を果たしています。

どうすれば法人税が節税できるか、経営者の所得に掛かる所得税はどのように取り扱えばいいのか、などは経営者の大きな関心ごとです。

それにきちんと答えていくことが税理士の大きな役割でもあります。

またその際、納税者に業務を通じて健全な納税を奨励するのも税理士の大きな役割と言っていいでしょう。

さらに事業を続けている限り、会社経営者が避けて通れないのが定期的に行われる税務署の調査です。

そのようなときにも顧問税理士は税務調査に立ち会い、納税者と税務署の適切なパイプ役となることを期待されています。

役割5:経営のパートナー役

税理士事務所は業務を通じて常に顧問契約先の業績数字に触れている存在なので、経営者の良き相談相手、ビジネスパートナーとしての役割が期待されています。

会社経営がうまく進んでいるのか、何か問題点はないのか、あるとすれば解決策は何かなど、経営者が必要とする会社の健康診断、あるいはアドバイスが税理士には期待されているのです。

また必要に合わせて税理士は、会社の資金調達、資金繰りに関するアドバイスをするほか、経営者の事業承継問題が発生したときには、会社の実情に合わせて適切なM&A手法等を提案する役割も与えられています。

税理士事務所を選ぶポイント

税理士事務所の概要と役割を理解してもらったところで、この章から税理士事務所を選ぶ際の基準やポイントについて解説します。

それぞれの基準やポイントに照らし合わせて慎重に税理士事務所を選べば、個々の会社にとってきっと適切な会計事務所が見つかることでしょう。

営業拠点をどこに置いているか?

税理士事務所を選ぶ場合、基準としてその事務所の所在地が顧問先のある地元か、そうでないかという点があります。

会計事務所が地元にあると、顧問先が相談ごとで急ぐ場合でも、こちらが事務所に出向くか、相手に自社に来てもらって相談できるので、何かと融通が付きやすい点がメリットです。

一方税理士事務所が地元にないと、そのような緊急時には都合良く対応できないし、書類のやりとりも何かと不便があります。

しかし今はネットも発達しているので、急ぎの案件でもない限り、メールやチャットワーク、スカイプ等で税理士と相談して結論を出すことも可能です。

もちろんそのようなツールを使えたらという前提での話になります。

なお、税理士の検索はこちらのサイトが便利です。

試験突破税理士か、税務署OB税理士か?

「税理士のなり方」の項でも解説したように、これから選ぼうとしている税理士事務所の代表が試験突破税理士か、税務署OB税理士か、という点は重要なチェックポイントです。
一般的にそれぞれの税理士は以下のような特徴があります。

・試験突破税理士…税理士試験を突破しているだけあって、最新の会計・税務の知識には長けている、事務処理能力も高い。一方で税務署との交渉能力は未知数であくまで人による、またこれは弁護士・公認会計士等のいわゆる有資格者組でも同じ傾向がある。

・税務署OB税理士…現役時に税務署で働いた経験があるため、税務調査の立ち会いで現役税務署員との交渉が期待できる。一方税理士試験を経験していないため事務処理能力は未知数。また税理士として独立したとき、すでに同じOB税理士から顧客を引き継ぎしている可能性もあり、顧客サポートなどの点も人によって差がある。

どちらの税理士タイプが自社に合うか、じっくり検討してから選びましょう。

試験突破税理士の場合、どれくらいの社会人経験、実務経験があるか?

試験突破税理士を選ぶ場合、どれくらいの社会人経験や実務経験があるかを事前に調べておくことはとても大事です。

試験突破税理士の場合、前職のキャリアがさらに2つに分けられます。

ひとつはサラリーマン等を経験した後に税理士になるケース、もうひとつは最初から会計事務所に入社して経験を積みつつ同時に勉強しながら税理士試験を突破するケースです。

前者はサラリーマン経験があるので、顧客の立場に立って考える思考がすでに身についており、それは税理士として独立した後も顧客の気持ちがよく分かる利点になります。

一方会計事務所だけの勤務経験しかない税理士は、あくまで税理士サイドからの見方しか体験していないので、その点については多少不安が残ります。

いずれにしても試験突破税理士が税理士登録前にどれくらい実務経験を持っているか、事前確認することが大切です。

また一口に税務と言っても分野はとても広く、その税理士がどのような税分野の実務体験を持っているかで相当信頼度が変わってきます。

税務署OB税理士の場合、現役時にどの税務畑の経験が多いか?

税務署OB税理士を顧問税理士として選ぶ場合、現役時にどの税務畑の就業経験が多かったかを確認しておくことは大事なチェックポイントです。

税務署と一口に言っても、その取扱っている税金の分野はかなり広範囲です。

OB税理士の現役時の職場が法人税畑か、所得税畑かでは、独立後の得意とする分野もかなり違っていることは容易に想像できます。

税理士の主たる顧客は個人でなく中小企業・個人事業主であることは解説済みですが、その点から考えても、税務署OB税理士の現役時の職場が法人税畑であったほうが圧倒的に税理士として有利であることは言うまでもないでしょう。

ただOB税理士にその点を直接聞くことは相手のプライドを傷つけるリスクもあるので、知り合いの現役職員に聞き合わせするなど、伝手(つて)をたどって間接的に確認する方が無難です。

税理士としての実務経験、独立してからの年数は?

税理士事務所を選ぶ場合、会社の事情で色々なタイミングがあると思います。

スタートアップ設立と同時に税理士を選ぶとき、事業途中で税理士を変更するとき、税理士が高齢で廃業してやむなく新しい税理士を探さねばならないときなど色々です。

そして選ばれる側の税理士も、それまでの実務経験、独立してからの年数など、条件はバラバラです。

さらに税理士事務所としてどんな税分野を得意としているかでも選ぶ条件は異なります。

したがって選ぶ側としては、あくまで自社の事情も踏まえて、また税理士の実務経験や得意とする税分野なども良く調べてから最終決定する必要があります。

顧客数は多いか?どんな層が主たる顧客か?

税理士事務所を選ぶ場合、その事務所が持っている顧客数の把握、構成している顧客層の分析なども大事なチェックポイントです。

そのうち顧客数は事業規模と正比例しているので、ある程度事務所の規模から推測できますが、もっと重要なのは顧客層の判定です。

できれば自社と似通った層の顧客群であることが望ましく、明らかに顧客層が違う税理士事務所と契約してしまうと、自社に対して十分な税務サービスが受けられないリスクがあります。

税理士事務所としての知名度、規模、スタッフの人数は?

こちらも前段の解説と絡みがありますが、事前に税理士事務所の知名度、規模、スタッフの人数を調べておくといいでしょう。

税理士事務所によっては、代表税理士の経営方針で積極的に営業活動を行った結果、スタッフ人数の処理能力を超えた顧客数を抱え込んでしまっている先もあります。

そのような会計事務所と顧問契約を結んでしまうと、十分な税務サービスが受けられないばかりか、せっかく払った顧問料が無駄になる可能性もあります。

もちろん税理士事務所として知名度を確認することも大事ですが、知名度だけに目を奪われることなく、あくまで顧客数とスタッフ人数のバランスの取れた税理士事務所かどうか、チェックすることを忘れてはいけません。

顧問税理士となった場合の支払報酬はいくら?

税理士事務所を選ぶとき、顧問税理士としての年間支払報酬はいくらになるかもチェックポイントのひとつです。

2020年現在、税理士報酬は自由化されているため明確な基準はなく、日本税理士会連合会のサイトを確認しても税理士報酬に関するそれらしき指針も書かれておりません。

税理士事務所が提供しているサービスの種類によって報酬には大きな差があるのが実情です。

ただし相場がないわけでもなく、税理士報酬は自由化されているということはすでに競争原理が働いていることになるので、一般的に中小企業が税理士事務所と顧問契約を結んだ場合、報酬の目安は年間30万円~40万円程度になります。

あとは目安を参考にして、契約予定の税理士事務所の顧問報酬が一般相場より高いか低いか、会計事務所が提供しているサービス内容を見ながら顧客が個別に判断していくことになるでしょう。

税理士として顧客に対する考え方は?

前項で税理士の世界はすでに競争原理に晒(さら)されていると書きましたがそれは全くの事実です。

またその競争は、単に税理士間の競争だけでなく、今では会計ソフトをパッケージやクラウドサービスで提供しているフィンテック企業も税理士の競争相手と言ってもいいでしょう。

それだけ税理士間の競争は激化しているわけです。

そうなると、税理士がこれまでのように単に記帳代行や申告代行をやっていただけでは顧客から顧問税理士として選ばれる可能性はますます低くなっていると言えます。

そしてさらに重要なことは、最終、顧問税理士となるためには、従来の業務に加えていかに付加価値のあるサービスを顧客に提供できるかに掛かっているといえるでしょう。

そのためにはまず、税理士事務所代表がどのように自分の顧客と関わっていくのか、その考えを事務所HPにきちんと表明しておく必要があります。

逆を言えば、そのような簡単なことさえ公式に表明していない税理士事務所は、顧客から信頼されず今後自然と淘汰されていくことになります。

一方顧客としては、税理士事務所を選ぶ場合、まずHPにアクセスして、その会計事務所がどのような考えのもとに運営されているか、確認することからスタートしたらいいと考えています。

まとめ

顧客が税理士事務所を選ぶとき、どのような基準やポイントから選んだらいいか、9個の基準・ポイントを示して選び方を解説してきました。

自社に合う税理士が見つかると非常に心強いものです。記事を参考にしつつ、長くお付き合いできそうな税理士事務所が見つかることを切に願っております。