創業期の起業家が知るべき10のこと【イベント開催報告】

2020年1月29日、イークラウド株式会社は「創業期の起業家が知るべき10のこと」というテーマのイベント「X-NIGHT」を開催しました。

VCとして、起業のシーンにこれまで何度も立ち会ってきたイークラウド株式会社 代表取締役 波多江直彦と、XTech株式会社 代表取締役 西條晋一が、創業期の起業家向けに事業のアイディア出しから資金調達の実体験まで、幅広く語ります。

創業期の起業家は、社名、ロゴ、事業、資金調達、仲間集めなど、多くの初体験を経験しながら会社の成長を目指していくことになります。

経験豊富な二人が、下記10個のトピックについて対談しました。

1. 起業に最適なタイミングとは?

鉄は熱いうちに打て

波多江 (以下太字) : ───はじめに、起業のベストタイミングについて。

西條(以下細字): その人によって違いますが、起業したいならなるべく早い段階で経営者か、もしくはそれに近い状態を経験するというのが一番近道かと思います。
僕はサイバーエージェントに転職する際、新規事業をやりたいと条件を付け、入って半年で子会社の役員になり、3ヶ月後には社長になりました。26歳の時から経営経験を積んできたということです。

起業が遅れる場合、それはそれで良い面もあります。僕がXTechを起業したのは結局45歳のときでしたが、その間で投資やファイナンスの知識などのスキルを積むことができました。
また金融機関の信用残高というのはけっこう重要です。僕の場合、2018年にエキサイトを買収する際、60億円の資金調達を行うことができました。実績を特段語らなくても、自分が何をやってきたかというのが対外的に理解されていたのです。
適切なキャリアと信用を積んでおけば、スムーズに大きなことができる場合もある、ということです。

───起業が遅れる場合、ハードルが上がったりもしますよね。

そうですね。それなりに出世して会社の役員なんかになると、なんとなく給料の条件やプライドも上がって、起業のハードルが上がってしまう。
転職で待遇などの条件が上がっていき、起業の志を忘れてしまうケースもあります。初心を貫いて「自分でやるんだ!」と強い意志を持てる人は良いと思いますが、自信がない人は、早めに起業した方がいいかもしれません。

今の時代、起業に年齢は関係なくなっていることは恵まれてると思います。
とはいえ「とにかく何が何でも起業するんだ!」というマインドセットがあるうちにやらないと、いつか忘れていくのも事実。
今「起業熱」が高まってる人はなるべく早く動いたほうがいいのではと思います。

2. 最初の事業案はどうやって決める?

考えるすぎるより、やってみなはれ

僕は、最初の一歩を踏み出すのにそれほど高尚な事業構想はいらないと思っているタイプです。
事業は生き物なので、やっているうちに変化していきます。ほとんどの企業が、3年ぐらい経つと初期で計画してなかった事業をやってるっていうのが当たり前だと思ったほうがいい。

なので、大げさな事業計画は立てない方がいいです。あまり神経質になるよりは、まずやってみる。

ただ気をつけたほうがいいのは、その事業が自分に向いているか?ということです。
例えば音楽系の事業をやるという時に、自分がそんなに音楽好きじゃなかったらキツイじゃないですか。スポーツとかBtoBとか、あと営業に全く興味がないのに営業系の会社をやるとかね。
向いてなさそうなものをやるっていうのは、投資家の視点で見てもお金を出しづらい。これは注意した方がいいと思います。

それから小資本で始められることと、粗利の高さは考えたほうがいいかなと思います。最近流行りのD2Cとかメディア系、代理店、人材紹介なんかは、キャッシュフローは考えないといけませんが、比較的すぐ黒字にはできる。
「小資本で始められ、粗利が高い」という2つをクリアしていると、心理的なハードルはだいぶ下がります。

3. ビジョン、ミッション、バリューは最初から必要か?

最初にバリューを決めるとマネジメントに役立つ

自分が起業で作り上げたい世界観があるとして、それを作る指針、方向性がビジョン。では、なぜその方向に行くのかっていうのがミッションですね。
それを、どういう価値観で実現していくかというのがバリューです。

僕は、ビジョンとミッションはあんまり決めないタイプです。

例えば昔勤めていたサイバーエージェントでは「21世紀を代表する会社を創る」っていうビジョンを謳ってたんですけど、実は賛否両論だったんですね。
人によっては「21世紀を代表する会社って何なのか、よくわからない」という声もありましたが、僕にとってはそれくらいの曖昧さが「なにか大きいことを成し遂げるんだろうな」と、ちょうどよかったけど。

一方、比較的先に決めるのがバリューです。マネジメントや査定の際に役立つので。

組織の人数が増えてくると、メンバーの中から不平不満が出始めたり、会社の悪口言うとか色んな人が出てきますが、その時にバリューっていうのが一つの法律的なものとして活用できる。
僕がバリューとしてよく使うのが「チームワーク」とか「貢献」っていう言葉です。
そうすると、「営業成績は優秀だけど、みんなの邪魔をしたり、チームワークに欠ける人」に、「うちはこういうバリューだから、それじゃ評価できない」っていう対話ができます。

なので、僕は最初にバリューをしっかり決めておいて、ビジョンとミッションは曖昧にしておくというタイプです。
あくまで全部個人的な意見で、色んなやり方があると思うんですけど。

ビジョン・ミッション・バリューとは?作り方や事例をみてみよう

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4. 初期メンバーはどうやって集める?

最初の12人に、とことんこだわれ

ジェームズ・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー2」という本に「誰をバスに乗せるか」という章があります。
どのメンバーと目的地に行くのか、ということです。

僕は、最初XTechグループを立ち上げるときに約1ダース、12名ぐらいは絶対に信頼関係のおける、あるいは信頼の置けそうな人を選ぶことに気をつけました。かつ、戦闘能力が高い、何らか尊敬するようなスキルのあるメンバーをこだわって採用しました。
どんな事業や会社を作る時も、まず一番最初に探すのは「片腕」となる人。自分と同じぐらいの目線で日々やり取りできる人です。スタッフメンバーよりは、幹部候補から最初に見つけて、組織の上から作っていきます。
スタートアップの場合は幹部が実務をやればいいんです。「こんな作業、僕の仕事じゃない!」と言ってスタッフを雇うくらいだったら、まず上層部から採用した方がいいですね。
理想を言えば、2年で4人ぐらいは欲しいです。

いまはツイッターやメッセンジャー採用とか、特殊な採用の仕方がたくさんあります。
スタートアップで採用を頑張っている人達はいろんなテクニックを使ってるので、そういうのを聞いてみてもいいと思います。

この2年でがらりと変わったのは副業解禁ですね。
面白そうな事業であれば、優秀な人でも必ずしも高い報酬を払わなくても手伝ってくれたりするので、そういう人に積極的に手伝ってもらうというのも手です。例えばメルカリのマーケッターとかに副業で手伝ってもらうとか。
副業してもらい、好きになってもらってから採用に至るケースも、うちでは結構多いですね。

5. 事業計画は最初どこまで作る?

その「壁打ち」の相手は本当に壁なのか

───投資家回りするための必須三点セットは、事業プラン、PL、資本政策ですね。

事業プランはPowerpoint形式で大体20枚くらいが丁度いいです。
結構大きなピッチイベントとかの資料だと、資金調達に必要な情報の7割くらいは入っています。IVS、ICC、B Dash Camp、TechCrunchなどのイベントを検索すれば資料が落ちているので、見ていけばイメージが湧くと思います。

PLのイメージは3カ年計画ですね、PLの数字だけじゃなく、KPIも作ります。
売上の根拠となる因数分解した要素をちゃんと入れて。人員計画、組織図のイメージも入れた方がいいです。販管費のほとんどは、人件費なんですよ。

あとは資本政策ですね。フォーマットはWebに落ちています。
調達の際、エンジェル投資家を入れるか入れないとか、VCか事業会社なのか、といった点は企業によって違うので、私達とかに相談していただければアドバイスはできます。

事業計画を書いたら、シードとかのベンチャーキャピタルに当ててみて「厳しく言ってくれ」と頼む。友達だったら、性格が悪いくらいの人に聞くのがいいです。
今はほとんどみんな良い人ですし(笑)、SNSとかもあるので悪口を言わないですね。少なくとも、表だっては。

───事業計画は、ちゃんと壁打ちしてくれる人に意見を聞かないとダメってことですね。

そう。何かプランを持っていて「こういうサービスあったら使う?」って聞いたりするとみんな「いいね、使う使う!」って絶対言いますから。
それって壁打ちでもなんでもないですからね。だからこそ、資金調達に回った方がいいと思います。結構厳しい意見を言ってくれるし、表はいいこと言われても、断られたらダメだってことだから、結果がわかりやすいじゃないですか。

6. 起業資金はどうすればいいの?

100万円の資本金で起業できる時代の選択肢

資本金でよくあるのは1000万円ぐらいですけど、別に100万円でもいいです。
ただ10万円くらいの少額になると大丈夫かな?って思われるので、100万ぐらいは欲しいです。

一株の価格ですが、小さくするのがおすすめです。
例えば資本金100万で1株1万円だと100株になって、最低単位が1%刻みじゃないですか。
それではちょっとやりにくいので、小さくしてほしいなっていうのはあります。
XTechの場合は大体いつも額面100円です。アメリカのベンチャーとかだと1セントとかですね。
ストックオプション出すときにも細かく出せるじゃないですか。もらった方も「おれ10万株のストックオプションもらったぜ」って嬉しいし(笑)

───いまや株式会社を作るのに、1000万円必要だった時代じゃないですからね。

日本政策金融公庫の創業融資制度も、利用するといいと思います。
あとは資本金として集めなくても、サービスが決まっていれば、クラウドファンディングとかやってもいいと思います。僕は5000万円ぐらい、クラウドファンディングで集めたことがあります。

───あとは株式投資型クラウドファンディングのような、新しい資金調達方法もありますね。

▼起業家の新たな資金調達の選択肢、「株式投資型クラウドファンディング」の徹底解剖資料はこちら

7. 最初のオフィスはどうする?

採用やカルチャーにも影響あり。リーズナブルに済ませたい

オフィスまわりは、なるべく費用を抑えたいところですけど。

個人的に、ワンルームマンションとかで起業するとダメですね。
狭い空間で男3人とか4人で長時間過ごすっていうのは耐え難いんです(笑)

XTechはシェアオフィスを利用してますけど、僕はこっちが好きです。
シェアオフィスにどういったベンチャーがいるかも重要で、有望なベンチャーとオフィスをシェアできれば、刺激になるような人がたくさんいたりします。

あとは大きな会社って結構オフィススペース余ってますので、交渉すると意外と貸してくれたりします。こういうのを活用するのもありだと思いますね。
「基本は自宅でリモートワークだけど、カフェでたまに集まる」みたいなやり方も一応あるみたいです。

ただ、一つのオフィスの方が一体感とかカルチャー出しはできますね。
オープンスペースだとカルチャーを作りづらいんですよ。朝会とか周りに遠慮しちゃって、やりづらいじゃないですか。

立地はわりと重要で、駅から近いかどうかによって採用に影響が出たりします。
あとトイレは、男女別じゃないと女性には嫌がられますね(笑)

8. 営業、採用、バックオフィス、本当は社長は何をやるべき?

社長は「得意なこと」を優先すべし

社長が何をやるべきかっていうのは、やっぱり得意なことが良いと思いますよ。
得意じゃない場合は、得意な人を探してくる。

───西條さんは、どんな優先順位をつけていますか?

僕の場合は、サービス・製品を良くすることを一番優先してやっています。
あとはもちろん採用。1人とか2人で、ある程度まで事業を作っていく場合もありますけど、僕の場合は優秀な人材が早く欲しいので、採用には時間を使っています。例えば今でも最終面接は週に5、6件ぐらいあります。

先日、あるCEOと飯食ってたんですけど、その社長は最終面接しないんですって。内定を出したあとの「最後のひと押し」として登場するそうです。目利きに自信がないから。
自分の人を見る目に自信あるっていう社長は最終面接をやった方がいいです。僕は、自信があるのでやります。
「俺は人を見る目はない」っていう社長がいるんですけど、そういう人は見る目がある人に作業をやってもらう。

社長の仕事なのかそうじゃないのかというのは、やっぱりどちらが成果が出るかという視点で決めてほしいと思います。

あ、ちなみに資金調達の時は社長が行かないとダメですよ。
CFOだけが行ったってほぼ断られますから。

───社長があんまり投資家プレゼンが上手くない場合はチームで行った方がいいですね。
メンバーに直接来てもらうと、こういう優秀な人がいるんだなってことで説得力が増します。

9. 採用すべきメンバー、採用すべきでないメンバーとは?

優秀な人材のモチベーションが上がるように

───採用にあたっては、最初の1ダース(12人)にこだわる。そして、経営チームを早めに作るのがポイントと、先ほどおっしゃっていましたが。

あと僕はプレイングマネージャーみたいな人を採用します。
実務能力が高い人。しょうもないことも、ちゃんとやる人(笑)

よくスタートアップでなんか年収を下げてストックオプションをたくさん出す、というところもありますが、あんまりやりすぎるとモチベーションに関わると思っています。
本人が納得していても、家族が「この人、年収3割下がってるけど大丈夫かしら?」みたいな、そういうのが発生するから。僕はできる限り、現状維持の年収を出す派です。

あんまりよくないのが、最初の段階で「仕事が忙しいからこの作業をやってくれそうな人」といった観点で採用すること。しかもお金ないから安い人を採るとかいうのだと、あんまりうまくいかないですね。

500万の人を2人採るんだったら、1000万円の人を1人採用する方がいいと思ってます。なかなか1000万円の人は採れないですけど(笑)

10. 初めての資金調達。何したらいい?

専門家に相談だ!

スタートアップ業界の課題の一つが、この「初めての資金調達で何をすべきか」という部分は、結構可視化されていないという点です。
誰がエンジェル投資家なのかとか、そのエンジェル投資家にどうやって会えるかとか、エンジェルによってどういう好き嫌いがあるのかとか。

たとえばVCの中でも、例えばHRテックとか採用に出資していると、類似案件にはもう出資しないようになっているとか。この辺は、聞いてみないないとわからないですね。
VCの担当によっても得意不得手はあるし。ルートが違えば行けたのに、というもったいない断られ方もありますし。なるべく専門家に聞いてから取り組んだ方がいいです。

間接金融の知識もあった方がいいですね、公庫からどうやったらお金を借りられるかとか、銀行借入をどうやったらいいのか、とか。

あと、社長のシェアは保つこと。特に共同経営者がいる場合は気を付けた方がいいですね。
自分のシェアを高めに保っておかないと資本政策の柔軟性がなくなります。共同創業者が辞めた場合に、株を適正な価格で買い戻せるような契約を結んでおくというのも重要です。

いかがでしたでしょうか。

「本には書いてないような手触り感のある話を聞けてよかった」「シード期の調達の生々しい駆け引き・ぶっちゃけ話が聞けて良かった」など好評をいただいているX-NIGHT。
これからも起業家の皆様へ、有益な情報をお届けしていく予定です。

次回、2020年2月26日のX-NIGHTのテーマは「起業家に贈る〜教科書には載ってない『シードファイナンスの極意』〜」。シードファイナンスの失敗事例や、エンジェルやVCへの具体的なアプローチ方法など、ポジショントークではない生の情報をお伝えしていきます。

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