少子高齢化が進み、日本における労働人口は減少傾向にあり、2050年には大きな問題になると言われています。当然、市場に流れてきている人材の数が減ることで、採用活動の競争は益々激しくなります。
そのような状況の中で、企業側も労働者の獲得や定着に向けて様々な対策を行っていく必要があります。出産など、家庭の負担の大きい女性に対する企業としてのサポートはもちろんですが、育児を行いながら仕事を行う男性へのサポートも必要です。また、高齢化が進む中、介護を行う従業員の働きやすい環境づくりに関しても、企業としては無視できない事柄であるといえます。
今回は、職業生活と家庭生活の両立支援をすることで、企業に優秀な人材を確保・定着させる「両立支援等助成金」についてご紹介していきます。
目次
両立支援等助成金とは
まずは、両立支援等助成金とはどのようなものなのか、概要を見ていきましょう。
両立支援等助成金の概要
両立支援等助成金の目的は、職業生活と家庭生活の両立を支援をすることで、企業に優秀な人材を確保・定着させる支援として行われているものです。
企業が、職業生活と出産・育児・介護等の家庭生活の両立を行うための制度を設計・導入し、従業員がその制度を活用した場合に助成金が支給されます。
利用できるコース一覧
両立支援等助成金には様々なコースがあり、出産時に利用できるものや、介護、育児に利用できるものなどがあります。具体的には6つのコースがあります。それぞれのコースの概要を見てみましょう。
・出生時両立支援コース
このコースでは、育児を目的とした休業や休暇を男性社員が取りやすいような環境を作り、実際に男性社員が育児休暇等を獲得した場合に取得することができる助成金です。
・介護離職防止支援コース
このコースでは、介護を必要とする家族がいる社員に対して、介護のための柔軟な就労形態を用意したり、介護休業を取得するための介護支援プランを策定したりした企業で、実際にそれらを活用する社員が出た際に取得することができる助成金です。
こちらは中小企業のみが対象です
・育児休業等支援コース
育児休業等支援コースでは、育休復帰支援プランを作成し、社員に育休取得と職場復帰を与えたり、社員の育休取得のために代替要員を確保したり、育休後仕事と育児の両立が難しい社員の支援を取り組んだりした企業に与えられる助成金です。
こちらは中小企業のみが対象です
・再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)
このコースでは、妊娠や出産、育児や介護を理由に退職をした社員に対して、両立が困難な時期を乗り越えて就業できるようになった際に、その社員を再雇用するという社員の復帰精度を導入している企業の中で、その希望がある社員を採用した際に利用できる助成金です。
・女性活躍加速化コース
両立支援等助成金には「職業生活と家庭生活の両立支援」という目的と「女性活躍促進」という目的がありますが、その後者の目的で作られたのがこのコースです。
女性活躍加速化コースでは、「女性活躍促進法」に基づき、女性の活躍に関する数値目標を企業が掲げ、その数値目標達成に向けた取り組みを計画し、その計画を実施して数値目標を達成した企業に対して支給される助成金です。
・事業所内保育施設コース(※現在は新規申請受付終了)
企業が社員のために子供の保育を行う事業所内保育施設を設置した場合に支給される助成金で、職業生活と家庭生活の両立を支援する企業への支援を行うものです。
利用できる企業・できない企業は?
次に、これらの助成金を利用できる企業とできない企業について確認していきましょう。
利用できる企業の条件
介護離職防止支援コース・育児休業等支援コースは中小企業のみが対象ですが、それ以外については全ての企業が対象となります。
全ての企業が対象といっても、当然ながら以下の部分が満たされていなければ対象とはなりません。
・雇用保険適用事業所であること
・支給のための審査に協力すること
・申請期間内に申請を行うこと
その他、それぞれのコースによって細かな条件が存在するため、厚生労働省のホームページより事前にご確認ください。
また、大企業に該当するか中小企業に該当するかによって支給内容が異なります。事前に自社がどの区分に当たるのか確認しておくようにしてください。
利用できない企業の条件
この助成金を受給することができない企業は以下の様な企業です。
・不正受給などの経緯がある企業
・不正受給に関与した役員等がいる企業
・労働保険料の納入をしていない企業
・労働関係法令の違反があった企業
・性風俗関連営業や接待を伴う飲食等営業などを行う企業
・暴力団との関わりがある企業
・暴力主義的破壊活動を行う恐れがある企業
・倒産している企業
・不正受給が発覚した際に名前の公表について承諾していない企業
これらの企業は当然ながら受給の対象となりません。
両立支援等助成金の支給金額について
ここからは、支給金額について確認していきましょう。
出生時両立支援コースの支給額
出生時両立支援コースでは、以下のような支給申請が可能です。
・1人目の育休取得において、57万円(中小企業以外は28.5万円)
・2人目以降の育休取得において、14.25万円以上
※育休5日以上(中小企業以外は14日以上)で、14.25万円
※育休14日以上(中小企業以外は1か月以上)で、23.75万円
※育休1か月以上(中小企業以外は2か月以上)で、33.25万円
・育児目的休暇の導入・利用については、28.5万円(中小企業以外は14.25万円)
介護離職防止支援コースの支給額
介護離職防止支援コースにおいては、以下の様な支給申請が可能です。
・介護休業の休業取得時28.5万円
・介護休業の職場復帰時28.5万円
・介護両立支援制度の導入時28.5万円
いずれも5人までの支給が可能です。
育児休業等支援コースの支給額
育児休業等支援コースにおいては、以下の様な支給申請が可能です。
・休業取得時28.5万円
・職場復帰時28.5万円
・職場支援加算19万円(職場復帰時に加算して支給)
こちらは、中小企業のみが対象となっていますので、注意して下さい。
再雇用者評価処遇コースの支給額
再雇用者評価処遇コースにおいては、以下の様な支給申請が可能です。
・1人目の再雇用時、38万円(中小企業以外では、28.5万円)
・2人目から5人目までの再雇用時、28.5万円(中小企業以外では、19万円)
1事業主あたり5人までが支給可能となっています。
女性活躍加速化コースの支給額
女性活躍加速化コースにおいては、以下の様な支給申請が可能です。
・加速化Aコースでは、1企業あたり28.5万円(常用労働者数301人以上の企業は対象外)
・加速化Nコースでは、1企業あたり28.5万円(常用労働者数301人以上の企業は対象外)
さらに、女性管理職比率が基準値以上に上昇した場合には、1企業あたり47.5万円
(常用労働者数301人以上の企業は28.5万円支給)
※加速化Aコース:「数値目標」の達成に向けた「取組目標」を達成した場合に支給
※加速化Nコース:「数値目標」の達成に向けた「取組目標」を達成した上で、その「数値目標」を達成した場合に支給
両立支援等助成金申請の流れ
申請の流れについては、それぞれのコースによって異なるため、詳しくは厚生労働省のホームページをご確認ください。
基本的には申請書類に記載し、所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境室で申請する形となります。
まとめ
これまで、両立支援等助成金についてご紹介してきました。
両立支援等助成金は、単に支給金額を受け取ることより、そのための社内制度構築により、自社の職場定着・採用活動につなげることが大きなメリットといえます。
そのため、制度があることを社内外で認知させるための施策の実施や、育休や介護による休暇が取りやすくなるために管理者への研修を行うことなどが非常に重要になっていきます。受給するための付け焼き刃な制度設計を行うのではなく、自社内でどういった風土を作りたいのか、関係者で今一度話し合っておくことをオススメします。