資本金はどのように決めればいい?税金や与信への影響は?

資本金はどのように決めればいい?税金や与信への影響は?

会社を設立するにあたって資本金をどれぐらいの額に設定すべきかという点は、多くの起業家にとって気になるところだと思います。

そこで今回は、「資本金」にテーマを絞り、資本金の必要性や起業時に準備すべき額、資本金の大小で得られるメリットやデメリット、税金への影響などについて解説していきます。

資本金とは事業を円滑に行うため会社経営者を含む株主がその会社に出資したお金のことを言います。

会社の事業をうまく運ぶためには、日常必要な運転資金だけでなく、事業に不可欠な事務所や工場、各種設備機械、机や椅子・パソコン等の備品、消耗品まで色々備えておかねばならず、それらを過不足なくそろえるために資本金が必要になります。

要するに資本金とは事業を行うため最初に必要な元手となるお金のことなのです。

資本金は株主が出したお金なので、会社が自由に使うことができ、銀行から借りる融資と違い金利も掛かりません。

特に起業直後は会社に事業実績もなく信用もない状態なので、銀行からの借入が難しく事業の元手のほとんどを資本金に頼らざるを得ないのが実態です。

また起業直後は、当面の売上げが立ちにくく、一方仕入れや人件費、光熱費等の支払いで支出が先行するので、一定の資本金がないとすぐに資金が枯渇して経営が立ち行かなくなるリスクがあります。

その点で最初の資本金が大きければ大きいのに越したことはないのです。

一方で資本金が大きければそれでいいのかというと、会社経営に関してことは単純でありません。

資本金の集め方(出資の方法)によって会社としての安定度が変わってくるし、税金の問題も考える必要があります。

創業時の資本金の最低金額や平均は?

創業時、一般的な中小企業はどの程度の資本金を用意して起業しているのでしょうか?

また起業にあたり最低限用意しなければならない資本金の額は決まっているのでしょうか?

この章ではそれらの点に関して解説していきます。

資本金の最低金額は?

2019年12月現在、会社設立における資本金の必要最低金額はありません。

資本金の歴史を遡ると、実は2005年まで最低資本金制度がありました。この最低資本金制度では、株式会社を設立するためには資本金が1,000万円、有限会社を設立するためには資本金が300万円必要でした。

しかし同年に成立した新会社法では、この最低資本金制度が廃止され、資本金が1円からでも会社設立登記が可能になり、起業のハードルが大幅に下がりました。

しかしながら、資本金が少ないと対外的にも色々なデメリットやリスクが発生する場合もあります。法改正の趣旨と矛盾するところもありますが、ある程度資本金を準備した上で起業する方が望ましいケースがあるからです。

まずは、すでに事業を開始している中小企業は実際どの程度の資本金があるのかデータを確認してみましょう。

資本金の平均は?

産業別、業種別に資本金の平均はどうなっているかを調査するために、総務省統計局の企業産業別資本金階級別企業数の割合を見てみましょう。

総務省統計局 – 企業産業別資本金階級別企業数の割合

この統計局データによると、全産業での資本金分布では、資本金額が300万円以上~500万円未満の企業だけで全体の4割、500万円以上~1,000万円未満の層まで入れると全体の5割超がこのゾーンに収まっています。

さらに資本金1,000万円以上~3,000万円未満の層まで含めたら、全体の8割強が収まる結果となっています。

一方資本金が1億円を超えるような企業は極めて少ないことが分かるので、結論としては全体の平均額は分かりにくいもの、中小企業の資本金の多くは300万円以上~1,000万円未満にあると見ていいでしょう。

また多くの中小企業の資本金の額がこのゾーンに集まっていることにもいくつか重要な理由や原因があります。

次章ではそれらの点について紹介していきます。

創業時の資本金が多い・少ないとどうなるか?資本金1,000万円、1億円の壁とは?

創業時の資本金が多いと対外的な信用が得られるのはもちろんですが、メリットばかりではありません。

実はデメリットもあります。

またその額をいくらに設定するかも重要なポイントです。

資本金の額には「1,000万円」と「1億円」に大きな壁があると言われています。

その理由について以下で説明していきます。

資本金が大きいとどうなる?

事業に余力ができる、信用力が増す

資本金が大きいことの一番のメリットは起業直後の資金繰りに余裕ができることです。

資金繰りに余裕があると、仕入れ先への支払いも期日にはきちんと払えるし、雇っている社員にも定期的に給与が払えます。

もちろん創業時に金融機関からお金を借りていれば毎月の返済期日には遅れず返済できます。

いずれも取引先や金融機関に対して会社の信用が増すので経営はさらに楽になります。

納める税金の額が変わってくる、税金負担が増える

消費税への影響

資本金が大きいと、その金額によって納める税金の額が変わり負担額が増えることになります。

その最も顕著な例が消費税です。

会社の資本金が1000万円未満の場合、設立時より2期間、免税事業者となることができて、企業として消費税の納税義務が免除されます。

つまり会社の設立1年目及び2年目は消費税を納めなくてよいということになります。

ただし2期目が免税事業者となれるかどうかは、1期目の上半期の売上高が1,000万以下であるか、または給与等支払額が1,000万以下である必要があります。

一方、開業当初の資本金が1,000万円以上の場合、最初から課税事業者として消費税の納税義務が発生します。

このように会社の資本金の額によって消費税の納税義務の免除が決まるため、資本金の金額を決めるうえではとても重要なポイントの一つと言えます。

国税庁 – 納税義務の免除

法人住民税の均等割への影響

次に資本金の額によって法人住民税の均等割部分の金額が変わるという点も資本金の額をどの程度とするかの判断に影響してきます。

企業には事業者として法人税等の納税義務がありますが、法人税等は以下の項目から構成されています。

法人税等=法人税(国税) +法人事業税(地方税)+法人住民税(地方税)

このうち、法人税(国税)と法人事業税(地方税)は事業から得られた利益を基準に計算される税金で、法人住民税(地方税)は利益と関係なく納税が必要な税金です。

そのため、法人税(国税)や法人住民税(地方税)は会社の利益が赤字だと払う必要がありませんが、法人住民税(地方税)はたとえ経営が赤字でも納める義務があります。

また法人住民税(地方税)は、法人の本店所在地、資本金の額や従業員数等で納税額が決まってくるので地域や企業規模によってもその納税額はやや違います。

以下で法人住民税の事例として、法人の本店が東京都内にある企業の法人都民税(特別区均等割分+道府県分)を一部引用してきました。

資本金の額従業員数特別区均等割分道府県分
1,000万円以下50人超12万円2万円
50人以下5万円
1,000万円超1億円以下50人超15万円5万円
50人以下13万円

これによるとたとえば、資本金が1,000万円以下で従業員が50人以下の企業だと法人住民税は7万円しか掛かりませんが、資本金が1,000万円を越えると、従業員数が同じ条件の会社でも法人住民税は18万円掛かることになります。

しかも課税は毎年のことであり、かつ会社が赤字であっても納税義務は免れないことからこの差は大きいですよね。

したがって創業時、資本金の額を1,000万円未満に設定すれば、「初年度及び次年度の消費税納付の免除」が受けられる上に、かつ、「法人住民税均等割についても納税義務額の最低額の納付で済む」というメリットがあるので、これは起業家にとっては無視できない情報です。

法人税への影響

資本金の額が1億円を越えると税金の負担額が増すという点も資本金の額を考える上で見過ごすことができない要素です。

仮に法人の資本金が1億円以下だと税務当局から「中小企業者」と見なされて、法人税の計算で大きなメリットが得られます。

すなわち法人所得の金額が800万円までは軽減説率(15%)*1 が適用されたり、交際費(経費)が年間最高800万円まで認められたり、一方で減価償却の計算*2 などで特例が受けられて節税できるのです。

一方資本金の額が1億円を越えると、中小企業者でなく大会社となるため、上記のような税制上の優遇が受けられなくなります。これもまた当初の資本金をいくらにするか、決める上で大きな要因のひとつです。

※1 法人税の税率(普通法人の場合)
・年間所得800万円以下の部分…税率15%
・年間所得800万円超の部分…税率23.2%(2018年4月1日以降事業開始分~)
・資本金1億円超の法人の場合…税率23.2%(2018年4月1日以降事業開始分~)

国税庁 – 法人税の税率

※2 取得価額10万円以上30万円未満までの少額資産は事業年度内で一括償却(損金算入)が可能

国税庁 – 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

資本金が少ないとどうなる?

では逆に資本金が少ないとどうなるでしょうか?資本金が大きい場合と同様、色々なことが起こります。

この章では資本金が少ないときに起こる現象やデメリット、その対策を説明します。

すぐに資金ショートしてしまう

そもそも資本金が少ないと事業がうまくスタートできない可能性があります。

特に創業時は、当面の売上げが立ちにくく、一方で仕入れや人件費支払いで支出が先行するので、一定の資本金がないとすぐに資金が枯渇して経営が立ち行かなくなります。

さらに資本金が少ないと、少々の赤字ですぐに債務超過になるので資金繰りが回らなくなって倒産リスクが上がります。

起業から半年、1年以内は特に倒産リスクが高いので、その間、自由に使える資本金の額は大きければ大きいほどいいのです。

新規顧客の取引口座が開設ができない場合がある

資本金が少ないと、新たな取引が発生するときの顧客側の与信でNGになる場合があります。

新しく売上先、仕入先と取引するとき、開示情報や信用調査会社の情報により相手方を事前調査することになります。

特に実績のない会社と取引するときには、その会社の信用を測る物差しが少ないため、開示情報である資本金の額がチェックされることも多いです。

最近では、企業が提供するバリュー重視で、資本金の少なさを理由に取引を断られるようなことは少なくなってきているものの、可能であれば最低限、業界平均程度の資本金は確保しておきたいものです。

融資の額が減る・融資を受けづらい

資本金があまりにも少ないと、金融機関から受けられる融資の額が少なかったり、そもそも融資が受けづらいというリスクがあります。

これは民間金融機関より起業家の融資に積極的な日本政策金融公庫でも同様です。

たとえば公庫の新創業融資だと、融資条件として自己資本が融資額の1/10以上ないと融資ができないようになっており、ここにも金融機関が自己資本を重視する姿勢が表われています。

昔に比べて民間金融機関も地銀中心に創業融資には前向きにはなってきましたが、それでも自己資本(資本金)を重視する姿勢は変わっていません。

中には資本金の2倍の額までしか融資しないと最初から決めてくる金融機関もあるくらいです。

こういったことから、スムーズに融資を受けたいのであれば、あまりにも低い資本金の額は避けたほうが無難です。

許認可が降りず事業が始められない

企業の中には事業開始に当たり必ず許認可を必要とする業種があります。

またその許認可業種には、当初から一定の資本金の確保を義務づけられている業種もあり、申請者が求める資本金を満たせず事業を断念せざるを得ないことも起こります。

たとえば一般建設業だと資本金が最低500万円以上*1 必要ですし、旅行業であれば許認可の区分別に300万円~3,000万円*2 必要です。

特殊な例ではありますが、このように必要な許認可の業種によって求められる資本金の額も変わります。

※1 国土交通省 – 建設産業・不動産業4.財産的基礎等(法第7条第4号、同法第15条第3号)

※2 観光疔 – 旅行業法

どのように適切な資本金の額を決定するか

それではこれまでの解説を踏まえて、資本金の適正な額はどれぐらいなのでしょうか?

ひとつの決め方は、起業予定の業種の平均額、税金の優遇程度、融資の必要額、許認可取得に必要な最低資本金額等の観点から総合的に判断して決めるという方法です。

そしてもうひとつは、事業としてスタートするのに最低限いくら必要かという視点から決めていくという方法です。

そこには運転資金だけでなく、機械設備等の固定費や事務所・工場を借りる費用まで含むようにすると良いでしょう。

まとめ

資本金の決め方のポイントについて解説してきました。

業種によっては売上高が何百億円の企業でも資本金が1億円以下の会社もありますし、工場・機械等の設備がないと事業が成り立たない業種においては、大きな資本金が必要となるケースもあります。

資本金の額は最終的には個々の会社経営者が自社の事業計画や事業内容を元に決めることなので、決まった答えはありません。

起業して間もない頃は、税金周りの影響が特に大きいと考えられるため、この記事で説明したポイントをしっかり抑えたうえで、慎重に決定するようにしましょう。