「次の売上げが入ってくるまでつなぎ資金を確保しておきたい」「できれば今日明日中にまとまった資金がほしい」など、経営者にとって悩みの種は、このような急にお金が入り用になったときの対策です。
そしてお金を借りるとなると最初の答えが銀行からの借入れですが、銀行からの借入れはよほど前から準備ができていないと間に合いません。
なぜなら銀行等の融資は審査に時間が掛かるからです。
今申込みしても、早くて資金が借りられるのは10日間~2週間先でしょう。
一方このような事業者の悩みを解決してくれる資金調達方法があります。
それがノンバンクのビジネスローン(事業者ローン)です。
ノンバンクのビジネスローンは即日審査が売りであり、早ければ申込みの翌日、遅くても申込みから数日以内に融資を実行してくれます。
ただしノンバンクビジネスローンの利便性が高いと言ってもメリットばかりではありません。そこには当然デメリットもあります。
そこで今回の記事では、ノンバンクのビジネスローン(事業者ローン)を取り上げ、銀行ビジネスローンと比べてどう違うのか、その利用メリット・デメリットは何か、長短所を踏まえてどのように利用したらいいかなどについて解説します。
目次
ノンバンクとは?
ノンバンク(Non-Bank)とは、文字どおり銀行や信用金庫以外の金融機関のことを指し、融資の資金源として預金を受入れせず、信用供与(資金の貸付け、保証等)を主要業務にしている金融会社のことを言います。
ノンバンクには、信販(クレジットカード)会社、リース会社、消費者金融、事業者金融専門会社などの種類があり、ノンバンクの貸金業務に係る資金は銀行からの借入れや株式・社債など他の金融市場から調達しています。
ノンバンクのビジネスローン(事業者ローン)とは?
ノンバンクのビジネスローンは、別名事業者ローンとも言い、一般的に無担保の事業者向け融資のことを言います。
もちろんビジネスローンには有担保(不動産、有価証券等)で対応しているタイプもあります。
ビジネスローンの融資形態としては、申込み受付の都度、1件ずつ審査を行い証書貸付の形で融資を行うタイプと、審査は初回だけで後は1年ごと定期的に自動審査で契約を継続していくカードローン型があります。
以下が一般的なノンバンクビジネスローンの商品スペックです。
融資対象者 | 中小企業等の法人、法人経営者、個人事業主 |
資金使途 | つなぎ資金、運転資金、設備資金など |
融資額 | 50万円~1,000万円 |
融資金利 | 年6.0%~18.0% |
融資条件 | 無担保または有担保(不動産、有価証券等) |
保証人 | 原則不要、ただし借主が法人の場合は代表取締役 |
返済期間 | 1ヶ月~5年 |
返済方法 | 期日一括・元利均等・元金均等・自由返済 |
銀行のビジネスローンとの違い
最近は銀行でもビジネスローンと銘打った融資商品を販売しているところが多くなってきています。
以下に挙げたのがその例です。
銀行は以前、融資は大企業だけでなく中小企業・個人事業主でも通常融資で対応していました。
しかし近年、中小企業をターゲットに、銀行でも審査時間を短くできる定型化した融資商品「ビジネスローン」を作り販売しています。
銀行ビジネスローンは、保証会社の保証付き、または無担保扱いで、銀行の通常融資では対応しにくい事業者(1回当たりの融資額がその銀行の通常融資では対応できない小ロット先など)を対象に貸出しており、銀行にとって貸出しリスクも少なく販売しやすいメリットがあります。
また将来成長が期待できるがまだ信用に乏しい小規模な法人でも銀行ビジネスローンを使えば取引先として取り込みやすい利点もあり、現在では色々な銀行で活用されています。
ではその銀行ビジネスローンとノンバンクビジネスローンの主な違いとはどのようなものでしょうか?
以下の3点で比較します。
・法律
・融資金利
・審査スピード
適用される法律が違う
両者の違いはそもそも適用される法律に違いがあります。
ノンバンクのビジネスローンは貸金業法という法律で融資が規制されています。
一方銀行ビジネスローンは銀行法の下で管理されており、それぞれ規制している法律が違います。
貸金業法の下では一般的にノンバンクのローンは総量規制の対象になります。
総量規制とはノンバンクの借り手が借りすぎるのを防ぐルールで、ノンバンクに対して借主の返済能力以上に貸付けすることを禁じており、その骨子は以下のとおりです。
・顧客の借入総額は原則年収の3分の1以内に制限される
・1社から50万円以上借りるとき、または複数の会社から100万円以上借りるとき、借主は金融会社に対して必ず所得証明書を出さねばならない
ただしこのルールはノンバンクから借入れする個人に適用が限定されており、ノンバンクビジネスローン、すなわち事業資金に対する融資は総量規制の「例外貸付」に分類されているため、上記のルールが適用されません。
そのためビジネスローン業者が個人事業主含む融資先に対して返済可能と判断すれば、年収の3分の1を越えて貸付けしても総量規制に触れないようになっています。
一方銀行ビジネスローンに関しては、銀行法ではこのような規制を行っていません。
銀行の与信判断の下に自由に融資額や融資条件が決められます。
融資金利が違う
ノンバンクビジネスローンと銀行ビジネスローンの違いは金利にもあります。
銀行ビジネスローンの融資金利が年2.0%~9.0%程度なのに比べて、ノンバンクビジネスローンは年6.0%~18.0%と割高です。
その理由は、銀行ビジネスローンの対象者が年商で10億円以下、平均して5千万円~1億円を越える中堅以上の中小企業に設定しているのに比べて、ノンバンクビジネスローンの借り手は個人事業主等の零細事業者から年商5千万円以下の小規模中小企業が多いからです。
その結果、ノンバンクビジネスローンの融資額も小さくなる傾向があり、一方で案件1本当たりの審査に係る時間やコストも銀行ビジネスローンとあまり変わらないことから、どうしても融資金利を高くしないと採算が合いません。
これがノンバンクビジネスローンの貸出金利が高くなる主な理由です。
一方、銀行ビジネスローンの場合、銀行はあくまで通常融資の補完的商品と位置づけており、さらに預金が貸付の原資なので融資金利を低く設定できます。
これらの理由が両者の金利差になっているのです。
審査の早さ、融資実行までの早さが違う
両者の違いは審査の早さ、融資実行までの早さの違いにもあらわれています。
銀行ビジネスローンの審査期間はやや長く、申込み~借入れまで早くても1週間程度掛かる一方、ノンバンクビジネスローンは即日審査もできるため、早い先だと申込みの翌営業日には資金が借りられます。
この理由は多くのノンバンクが審査でスコアリングシステムを使っているからです。
スコアリングシステムとは、個人事業主または企業の信用度を属性データから点数化して与信判断するシステムのことで、属性データをコンピュータに入力して与信判定するので審査に係る時間を大幅に短縮することができます。
多くのビジネスローンにおいて、この方式の採用で審査業務の効率化が図られ、審査の可否判断が早くできるようになったのです(一部の小規模業者は除く)。
一方、銀行ビジネスローンも同様なシステムを採用しているものの、銀行審査に加えて保証会社の審査も入ったり、また伝統的な審査方法を加味したりして与信判断するので、どうしてもノンバンクより数日程度、審査結果が遅く出る傾向があります。
さらに銀行ビジネスローンは、利用できる方をその銀行と提携関係のある組織・団体の会員に限定するなど、色々と制約も多い融資商品です。
一方、ノンバンクビジネスローンは、原則、事業者なら誰でも申込みをして審査を受けられるのでこの違いは大きいと言えます。
ノンバンクビジネスローンのメリット・デメリット
この章ではノンバンクビジネスローンを利用したときのメリット・デメリットを解説します。
メリット及びデメリットを知っておけば、状況に合わせてビジネスローンの的確な使い方ができるようになるでしょう。
ノンバンクビジネスローンのメリット
・ノンバンクビジネスローンは審査時間が早いので、銀行が対応できない緊急性の高い資金繰り融資にも対応できる
・銀行融資に比べて提出する審査書類が少なく、スコアリングシステム採用のため審査時間も早い、その結果、最短即日融資も可能
・ノンバンクが借入先に設定した融資限度額内で繰り返し反復利用ができる
・借主の業歴が浅く経営実績がそれほどなくても比較的審査に通りやすい、基本的に開業後、業歴が1年以上あれば申込みできる
・ノンバンクビジネスローンは原則、無担保・無保証対応、また第三者保証人も不要と条件が緩やか(ただし法人が借主の場合、代表者が保証人になる必要あり、一方個人事業主が借主のときは保証人不要)
ノンバンクビジネスローンのデメリット
・銀行融資、公的融資に比べて融資金利が高い、そのため借りすぎたり借りっぱなしにして放置したりしておくと、支払金利がかさんで企業の財務体力を弱らせてしまう
・銀行がノンバンクビジネスローンを借りたことに気づくと、次からの融資が借りにくくなる、また融資を断られるリスクが発生する
(特に法人の場合、ビジネスローンを借入れして残高があれば、必ず決算書の借入内訳で借入先が分かるので簡単に銀行に知られてしまう、また借入れ内訳を意図して隠すと逆に銀行に不審がられる)
・1社当たり借入れできる金額が銀行ビジネスローンに比べて低い
(もともとノンバンクビジネスローンは銀行の通常融資が受けにくい中小企業、零細事業者向けに作られているので、貸し倒れリスクを下げるため融資可能額が低くなっている)
・ノンバンクビジネスローンは借入れ金利が割高なので、短期の資金繰り資金に向いている一方、長期の設備投資や経常運転資金の利用には向いていない
ノンバンクビジネスローンの選び方
それではビジネスローンを販売しているノンバンクを選ぶとき、どのような基準で選んだらいいのでしょうか?
もちろんさまざまな選び方がありますが、以下のような基準に基づき選ぶと良いでしょう。
【基準1】金利等の融資条件を比較して自社の希望条件に最も合致している業者を選ぶ
【基準2】金利の低さ以外の審査スピード、申込み条件等も十分検討してバランスの取れている業者を選ぶ
【基準3】創業間もない企業にもビジネスローンが利用できる点をアピールしているノンバンクを選ぶ(このような業者は審査がそれほど厳しくない)
検索エンジンなどで業者を調べて比較する際は、広告記事が多くフラットな目線で見るのが中々難しいと思いますので、必ず複数のソースを比較して十分に吟味して選ぶようにしましょう。
ノンバンクを検討すべき段階とは?
日頃は銀行融資や日本政策金融公庫融資を使っていて、ノンバンクの利用を考えるようになる段階とはどのようなときなのでしょうか?
以下のようなケースになったときはノンバンクを検討すべき段階と考えます。
・銀行が借りすぎと判断して、融資を申込んでも、なかなか良い返事が得られない段階に達したとき、あるいはあっさりと断られたとき
・会社として銀行融資以外に他の資金調達手段を持っておきたいと考え始めたとき
・緊急でどうしても今日明日中に資金が必要になったとき
・銀行に融資条件として担保や信用力の高い保証人を求められても当てがないとき
ノンバンクビジネスローンの取引の流れと必要書類
一般的なノンバンクの取引の流れは以下のようになります。
【STEP1】ビジネスローンの申込み
【STEP2】必要書類の提出
【STEP3】スコアリングシステムを使って審査実施
【STEP4】審査結果の通知
【STEP5】契約、融資金の交付または振込入金
またノンバンクビジネスローンの一般的な提出書類は以下のとおりです。
・本人確認書類(運転免許証等)
・法人登記事項証明書
・決算書または確定申告書、1期分または2期分(業者による)
・納税証明書(申込時、税金の未納があると審査に落ちるリスクが高い)
まとめ
ノンバンクのビジネスローンについて、その特徴、銀行ビジネスローンとの違い、利用のメリット・デメリット、ノンバンクの選び方や検討する段階などについて解説しました。
ノンバンクビジネスローンは、資金の緊急時などには事業者にとって極めて便利な資金調達方法です。
一方で銀行ローンに比べて金利も高く、使い方を誤ると会社の基礎体力を弱めてしまう弊害もあります。
それだけに事業者には、この記事を通じてビジネスローンの長所短所を理解してもらい、ぜひ会社の実情に
応じた臨機応変な使い方をして頂きたいと考えます。