公庫の融資で資本計画が原因で審査落ちする6つのケース

創業時において資金が不足する場合、日本政策金融公庫(以後「日本公庫」)が行う各種創業融資を受ける方法があります。

融資である以上審査がありますが、審査に落ちるよくあるケース5つのひとつに「資金計画で審査落ちするケース」があります。

ここではそもそも資金計画とはなにか、そして資金計画で審査落ちするケースはどのようなものか、最後にその挽回策についてわかりやすく解説します。

創業における資金計画とは、事業開始およびその後数カ月程度にわたり必要な資金を算定し、その資金をどのように調達するかを検討することです。

分かりやすく言えば「何にどれだけの資金が必要で、その資金をどのように調達するかを決めること」です。

「何にどれだけ資金が必要か」を決める

必要な資金には、店舗や事務所の保証金(賃借する場合)、生産設備やパソコンなどの機器や機材、事業用車両等の購入費が該当します。これは設備資金と呼ばれます。

また商品の仕入れ資金、家賃や人件費、光熱費といった経費の支払資金も該当します。これは運転資金と呼ばれます。

これらに必要なものと金額を、見積書や賃貸借契約書などから具体的に算定することがまず必要です。

「資金をどのように調達するか」を決める

事業開始に必要なものと金額が決まれば、その資金をどうやって調達するかを決めます。

多くの場合自己資金や日本公庫等からの創業融資借入、他の金融機関、親族や知り合いからの借入が中心でしょう。

資金調達先と金額を算定し、資金計画が完成することになります。

なお、算定した必要金額と資金調達額は一致しなければなりませんので、資金計画を立てる時には注意しましょう。

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資金計画による審査落ちでよくある6つのケース

①資金計画が過大なケース

自己資金や従事者数、事業内容と比べて、資金計画が過大過ぎるケースです。

自己資金については他の記事でも解説されているので、ここでは割愛します。

従事者数や事業内容と比較して資金計画があまりに過大であれば、資金調達の額を大きく見せて必要以上に日本公庫からの融資を獲得しようとしているのではないかと、審査担当者が疑念を持つことがあります。

実際申込金額に対する融資金の減額を予想し、そのように過大な資金計画を準備するケースは実在します。

融資は相互の信頼関係を基礎にしていますので、そのような行為は審査判断に大きなマイナスとなります。

②資金計画が過少なケース

逆に自己資金や従事者数、事業内容と比較してあまりに過少な資金計画であれば、自己資金の割合を過大に見せようとしているとの疑念を持つ場合があります。

本当は必要な設備の購入を資金計画から除外することで、「何にどれだけ必要か」の総額を小さく見せることが可能です。

すると必然的に「どうやって調達するか」の総額も小さくなり、自己資金が占める割合が高くなります。
具体例で解説します。

本来の必要金額が1000万円、資金計画に記載された見かけの必要金額が500万円、自己資金が100万円とします。

本来の資金計画では自己資金割合が10%であり、あまり高い方とはいえず融資判断上あまりプラスではありません。

ところが見かけ上の資金計画における自己資金割合は20%にもなり、まずまずの割合となります。

創業する業種に本来必要な設備購入資金が資金計画に入っていないなど、資金計画が過少なケースは、審査判断に大きなマイナスとなります。

③資金計画に弾力性がないケース

前述の「何にどれだけ資金が必要か」の部分に弾力性がなければ、審査落ちする確率が高まります。

ここで言う「弾力性がない」とは、その事業を開始するにあたり必要な金額が固定されていることを指します。

例えば営業車両が事業に必要な場合において、新車でなければならないと資金計画を提示されるケースと中古車でも構わないと提示されるケースでは、前者の方が審査落ちする確率が高くなります。

以下、具体例を挙げて解説します。

<資金計画の内容>
・必要金額は1000万円(営業車両購入費が新車で400万円、その他必要金額が600万円)
・自己資金、他の資金調達は0

このようなケースにおいて、1000万円の融資なら無理でも700万円の融資なら可能と判断された場合に、審査落ちするかしないかの瀬戸際となります。

400万円での新車購入しか認められないのであれば1000万円の資金計画を満たさなければならず、700万円を融資しても無意味となり審査落ちとなります。

もし100万円での中古車購入でも可能であるならば、そういった代替プランについても記載しておくことで、700万円での融資が意味を持ち、融資される可能性が高まります。

このように資金計画が硬直的であれば、審査落ちする可能性も高くなるため、弾力性が高くなるような策を講じる必要があります。

④資金計画が外部調達に依存しているケース

「資金をどのように調達するか」の内訳、内容も融資判断に大きな影響があります。

自己資金の少なさと裏表の関係と言えますが、融資による資金調達であったり出資による資金調達に偏っていたりすると3つの意味で審査落ちにつながりやすくなります。

1つ目は、事業遂行における意思決定やリーダーシップが発揮されにくいなど経営の自由度が低いことが、将来問題となる恐れが高い点です。

スタートアップ時の事業運営はスピードが求められることが多いでしょう。その際に出資者からの横やりが大きければ、自由な経営判断がそれだけ制約を受けビジネスチャンスを逃すことにつながる可能性が高くなります。

2つ目は、返済必要な金融機関からの資金調達先が占める割合が高ければ、月々の諸支払に占める固定的支出も大きくなる点です。

固定的な支出が大きくなれば利益を上げるために必要な売り上げもそれだけ高くなりますので、事業が軌道に乗りにくいと判断されることがあります。

3つ目は、創業者の事業が他人依存で進められ、創業の意欲や意思が弱いのではないかとされる点です。

他人依存の資金計画では、人任せの印象を受けることは当然ではないでしょうか。人任せでは、想定外の状況に的確に対処する経営能力が疑われることになります。

⑤自己資金以外の外部調達先に問題があるケース

外部調達先に問題があるケースとは、いわゆる高利で融資する企業から資金調達を受ける(受けている)のことです。

簡単に借りられるところは借入利率が高くなっています。貸す方は金利が高いので貸し倒れがあっても事業が存続できるのです。

一時的にそのような企業から資金を調達して事業を開始しても、いずれその利子負担の重さが資金繰りに影響を与えることは間違いありません。

高利率の借入を前提とした資金計画は、審査落ちの確率を高めます。

⑥資金計画が楽観的に過ぎるケース

具体例で言うと、総資金計画が3000万円において自己資金が200万円、日本公庫からの融資申込は300万円と少なくても、他の金融機関からいきなり2500万円借入する様な資金計画です。

担保物件の価値が4000万円でもあれば別ですが、何の担保もなく資産の裏打ちのない創業先に2500万円融資する金融機関はないといっても過言ではないでしょう。

日本公庫への融資申込が少額であっても、全体の資金計画が楽観的過ぎると審査落ちする可能性が高くなります。

審査に落ちないための対策

資金計画が過大・過小である場合の対策…①・②

適正な資金計画を策定することに尽きます。

多種多様の業種に数多く接している日本公庫の審査担当者は、どの業種の開業にどんなものが必要でどれくらいの事業規模ならどれくらいの金額が必要かを概ね知識として持っています。

それと異なるものに妥当な説明ができなければ、いたずらに資金計画が過大・過少との疑いを持ち、ひいては申込全体の信頼度にも関わります。

資金計画に弾力性がない場合の対策…③

希望は希望で必要金額を記載するとしても、減額可能なものについては事前に確認しておき資金計画を弾力的なものにしましょう。

担当者との面談の際、「全額が希望だが最低この額まであればなんとかなる」と伝えることも有効です。

資金計画が外部調達に依存している場合の対策…④

自己資金の積み上げはもちろんですが、出資を受ける場合株式の持分に気を配る、経営への意欲はしっかりアピールするなどの対策を行いましょう。

自己資金以外の外部調達先に問題がある場合の対策…⑤

高い利息をとるところからは、借りないようにしましょう。

資金計画が楽観的に過ぎる場合の対策…⑥

自己の知識を高めるほか、税理士などの専門家のアドバイスを受けるなど第三者のブラッシュアップを受けましょう。

他者のアドバイスを受けることにより、客観的で現実的な資金計画を策定することができるでしょう。

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まとめ

この記事では資金計画で審査落ちするケースを解説しました。

この記事が審査落ちしない資金計画策定の役に立つことを祈っております。

面談や自己資金など、資金計画以外での審査落ちのケースについては、以下の記事を参考にしてください。

日本政策金融公庫の融資の審査落ちでよくあるケース5選

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