日本政策金融公庫(以下、日本公庫)で融資を受ける場合、創業融資においては必ず現地調査が行われます。
また継続企業においても初回申し込みであれば必ず、継続申し込みの際でも必要に応じ現地調査が行われます。
ここではその現地調査とはどのようなものか、現地調査で審査落ちするような場合はどんなものか、審査落ちしないための予防策についてわかりやすく解説します。
目次
現地調査とは
現地調査とは創業計画や事業計画の実現可能性を判断するため、事業所や店舗予定地に審査担当者が直接出向き様々な調査を行うことです。
申込が適正かどうか、申込人の居住実態を確認することもこの調査に含まれます。
申込人の同席を求めることもありますが、無予告で行うこともあります。
現地調査で審査落ちするケース(創業計画・事業計画との比較編)
現地調査の結果が原因で審査落ちするケースはいくつかありますが、創業計画・事業計画と実態を比較した結果によるもの、事業の実在性が問題となるものに分けられます。
ここではまず創業計画・事業計画と比較して審査落ちするケースを解説します。
1.業種が違うケース
日本公庫が扱えない業種であることが判明するケース
第一に、実際は日本公庫が扱えない業種であることが判明するケースです。
喫茶店として創業申込があったものの、店舗予定地では風俗店と思われる内外装工事がされていて、業種が違っていた場合などがこれに該当します。
日本公庫には貸金業や風俗営業など、融資の対象とならない非対象業種があります。申込当初から申告されていれば、対象外である旨を説明し申し込みを受け付けません。
まれに(意図的に?)申込時には対象業種であると申告していながら、実際は非対象業種であることがあります。
現地調査で非対象業種であることが判明すれば、審査落ちすることになります。
創業計画書に記載した業種と異なるケース
第二に、日本公庫の対象業種ではあっても創業計画書とは違った業種であれば、融資判断上問題となります。
日用雑貨の小売業と申し出があったにもかかわらず、現地調査で陳列されている商品から健康食品販売業であることが判明、さらに必要な許認可も取得予定がないことが判明するケースなどがあります。
業種が違えば、創業計画における売上予測や経費予想、利益予想などの収支計画が、全て実態と異なることになります。飲食店など許認可が必要な業種も数多くあり、その場合は法令順守(コンプライアンス)上の問題ともなります。
加えて申し出の詐称は、融資判断において大きなマイナス要素となります。
現地調査で申し出と異なる業種であることが判明すれば、収支計画の信頼性と申込人の信用に大きな影響を及ぼし、審査落ちにつながりやすくなります。
2.周辺環境が違うケース
オフィスなどが点在する地域で持ち帰り弁当を店舗で販売するとあったものの、店舗予定地を調査すると周辺のほとんどが住宅であるようなケースです。
業種にもよりますが、主な販売層が存在しているか、同業他社の競合状況はどうかといった周辺環境は、事業が軌道に乗るかを大きく左右するポイントです。
売上の見込みを立てる上で非常に重要な周辺環境が違っていれば、審査担当者は収支計画の信ぴょう性に大きな疑問を持たざるを得ません。
現地調査で競合状況などの周辺環境が申し出と違っていると、収支計画の信憑性が揺らぎ審査落ちしやすくなります。
3.店舗・事務所の規模・内容が違うケース
店舗や事務所が創業計画書に記載した規模と異なるケース
第一に店舗や事務所の規模が創業計画書の記載と違うことが、現地調査で判明するケースです。
創業計画書には、別の物件の見積書や概要書をもとに記載されていることがあります。
店舗や事務所の規模が違うと、通常であれば家賃や内装工事の費用も違ってきます。それらが違うと、創業における資金計画全体が異なってきます。
実際の資金計画より小さく見せるために、店舗や事務所の規模を小さく見せていたことが現地調査で判明することがあります。
資金計画を小さく見せることで自己資金の割合を大きく見せることが可能だからです。
逆に多くの金額の融資を受けるために、実際の規模より大きく創業計画に記載することもあります。
現地調査において実際の店舗等の規模が計画より小さいことが判明するケースです。
いずれのケースでも、正しく申し出ていないという点で審査担当者の印象はかなり悪くなります。
融資は、融資する側とされる側の信頼関係を基に行われるものです。
物件の規模位と軽く考えられる方もおられますが、一事が万事、一つ偽る相手なら他にも偽っているところがあるのではないかと考えるのは審査担当者として当然と言えます。
店舗や事務所の内容・実態が創業計画書と異なるケース
第二に店舗・事務所の内容や実態について、創業計画書との違いが判明するケースです。
完全に業種が違うケースは先に解説しました。
創業計画に記載された同じ業種ではあるものの、店舗等の内容から違う業態であることが判明するケースもあります。
日用品雑貨の実店舗での小売業と申し出があり現地調査を行ったところ、販売スペースが全くなく実際はネット販売専業であることが判明するような場合が当てはまります。
実店舗での販売戦略とネット販売での販売戦略には違いがあり、広告宣伝費などの経費や人件費にも差が出てきます。そうなれば申込人から提示された収支計画を見直さなければならなくなります。
収支計画を見直した結果が変わらないケースもあれば、大きく変わるケースもあるでしょう。大きく変わり収支がマイナスとなれば、融資は困難となります。
創業計画書への記載と違いがなければ、最初から収支計画をチェックし問題点を指摘して現地調査に臨むことが可能です。
しかし現地調査で違いが判明した場合、収支計画を再チェックし直さなければならないだけでなく、違いが意図的なのかそうでないのかについても判断する必要が出てきます。
現地調査で店舗・事務所の内容に違いがあることが判明すれば、収支計画の見直しにより余計な時間がかかるだけでなく、審査のスタンスにも影響があります。
現地調査で審査落ちするケース(実在性の調査編)
事業の実在性がポイントとなって審査落ちするケースは、以下の通りです。
事業予定地に対象物件が存在しないケース
予定地に店舗や事業所の対象物件がなければ、創業計画自体の実在性が疑われることになります。
現地調査があることを想定して、一時的に看板を掲示したり、知人に事業所としての口裏を合わしたりして対策を講じるケースがあります。
そのような対策を講じても、別の日に無予告で現地調査したりすればすぐに申し出が虚偽であるかが判明します。
こういったケースには様々な特徴があり、日本公庫ではそのノウハウが共有されています。虚偽申込は詐欺行為であり刑法上の犯罪です。
このようなケースは融資審査上一発アウトです。注意して下さい。
居住の実態が見られないケース
これも重要なポイントです。申込人の居住の事実が現地調査で判明しなければ、虚偽申込が疑われます。
居住の事実は表札や住宅地図など様々な手段で確認しますが、詳細は明らかにされません。
このケースも一発アウトです。
審査に落ちないために
現地調査で審査落ちしないためには、以下の点に注意することが必要です。
1.創業計画書には虚偽を記載しない
当然のことと言えます。
2.業種や業態など不明点は、記載前に日本公庫へ確認する
意図的と思われるリスクが小さくなります。
3.創業計画書に記載したことに変更があれば、審査担当者に申し出る
事前に申し出があればお互い余計な手間をかけずに済み、意図的と思われることもなくなります。
4.日頃から実在性に疑問を持たれないようにしておく
多少の不便はあっても表札を掲げるなど、第三者が見て実態に疑問を持たれない生活をしておきましょう。
まとめ
現地調査で審査落ちするケースを解説しました。
審査落ちしないためのポイントを押さえ、正々堂々としていれば、どれも問題はありません。
不明な点は事前に日本公庫へ確認しておきましょう。申し込み後に変更があれば審査担当者に伝えましょう。
そうすれば審査落ちの確率は抑えられるでしょう。