政府系金融機関である日本政策金融公庫(以降、「日本公庫」)は営利を目的としないため、創業者をはじめ中小事業者の資金調達先として心強い相手と言えます。
とはいっても日本公庫も金融機関であり、融資である以上審査を経ることになります。返済が見込めないなど様々な理由に該当すると、審査に落ちてしまいます。
ここでは創業者向けの融資において、日本公庫からの審査に落ちるよくあるケース5つをわかりやすく解説します。
目次
日本公庫の融資の審査落ちでよくあるケース5選
①自己資金や資金計画で失敗するケース
自己資金で失敗するケースとして、最も多いのが「自己資金が少ないケース」です。
創業融資において自己資金の額は非常に重要な意味を持ちます。そして自己資金額だけでなく、資金計画における割合も審査判断に大きな影響を与えます。
自己資金は創業に向けたこれまでの計画性を第三者が判断する際に、参考とする最も客観的な事実です。
宝くじに当たるようなことがない限り、通常は創業を見越して勤務収入をコツコツと積み立てるケースがほとんどでしょう。そのような計画性の有無は、創業の本気度を測る指標とされます。
そこで自己資金が少ないケースは計画的でない(場当たり的な)創業の可能性が高いと判断されやすいので、審査落ちにつながりやすいのです。
また、「資金計画で失敗するケース」でよくあるものは、資金計画が外部からの調達に偏っていて、他人任せとなっているケースです。
自己資金は単に金額を積み上げるだけでなく、創業における資金計画全体に占める割合も大きくすることが望まれます。
自己資金が占める割合が大きければ、外部からの資金調達への依存を減らすことが可能なため、返済負担が減り事業が軌道に乗りやすいと考えられるためです。
外部調達依存の資金計画は、審査落ちにつながります。
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②個人信用情報や支払振りで失敗するケース
個人信用情報で失敗するケースは、決して少なくありません。
日本公庫の事業資金や教育ローンの審査では、信用情報機関へ登録情報の照会が行われます。
CICやJICC、KSCと呼ばれる指定信用情報機関には、ローンやクレジットの利用状況や返済状況、破産や民事再生などの法的整理を行った情報が、定められた期間登録されています。
直近に法的整理の情報があれば、融資審査上大きなマイナス要因となることは避けられません。
注意したいのは、スマートフォンなどの携帯端末の購入も厳密には割賦販売(購入代金を分割で払う販売方法)にあたりますので、その利用額や支払い状況が個人信用情報として登録される点です。
多くの場合毎月の通信料と合算され請求されているので、単なる電話代の支払として軽く見られているようです。しかしあくまで携帯端末購入代金の分割払いは個人信用情報の登録対象ですので、遅れや未払等があれば信用情報にキズがつくことになり、審査判断上マイナスになります。
毎月決まった支払が遅れるようでは、支払いにルーズで融資金の支払にも無頓着とみなされるからです。
個人信用情報の登録内容がネガティブであれば、審査落ちにつながりやすくなります。
一方、個人信用情報に登録されない支払いがあります。家賃支払いや水道光熱費、電話代のみの支払いなどは個人信用情報に登録されませんが、融資審査ではこれらの支払い状況も確認されます。
これらの支払振りが悪ければ、個人信用情報のケースと同様に審査判断においてマイナスです。
個人信用情報に出てこない家賃等も支払振りが悪ければ、審査落ちにつながりやすくなります。
③創業計画書で失敗するケース
「創業計画書で失敗するケース」の中にもいくつかのケースがありますが、主要なものを解説します。
1つ目は、創業の動機がはっきりせず、またこれまでの経歴ともつながらないケースです。
取扱商品やサービスの内容が不明確で、セールスポイントが具体的でないケースも審査落ちにつながりやすくなっています。激しい競争の中で軌道に乗るか疑問であり、場当たり的な印象が強いからです。
販売ターゲットが絞られておらず、販売戦略が練られていないケースも審査判断上大きなマイナスとなります。
そして最もよくある失敗例が、収支計画が客観的でなく信憑性に欠けているケースです。
創業時においては売り上げや支出の実績はないため、融資判断は全て予測を頼りに行うことになります。
したがって審査担当者は、その売上げの予測や経費などの支出の予測、利益の予測の根拠が客観的かどうかを重視します。
知人の店舗でこうだったとか、勘でこれぐらいと判断したとかでは客観性に欠けると判断されるだけでなく、創業計画全体の正確性や確実性も疑われるため、審査落ちにつながりやすくなります。
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④審査担当者との面談で失敗するケース
申込が適正に受付られると、審査担当者と日本公庫の支店審査コーナーで1時間程度面談が行われ、主に創業計画の内容や、自己資金をはじめとする資金計画について説明を求められます。
服装面では、必ずスーツでなければならないというわけではありませんが、あまりにラフな格好は一事業者としてのTPOの判断能力を疑われます。よほどの信念があれば別ですが、わざわざ奇をてらう必要もないでしょう。常識的な服装であれば、服装で審査落ちにつながることはありません。
言葉遣いや話し方は特別丁寧でなくてもよく、妙にへりくだる必要もありません。常識的であれば問題ありません。
面談で失敗するケースの代表例は、自分で作成してきた創業計画書の内容等をしっかり理解し、自分の言葉として説明できないケースです。流暢に話せなくとも、自分事として話せるようにしておく必要があります。
創業の動機や略歴などは、当然本人であれば問題なく説明できるはずです。取扱商品・サービスの内容やセールスポイント、販売ターゲットや販売戦略についても真剣に創業に取り組んでいれば、本人なりの言葉で説明できることでしょう。
これらの項目について審査担当者が尋ねた際に、他人事のような回答や曖昧な回答をすると創業の本気度が疑われることになります。他人が作成したのではないかと捉えられることさえあります。
税理士等の専門家の助けを受け創業計画を立てることは、決して悪いことではありません。むしろ実績のある専門家の目を通ることで、プラスに働くことの方が多いでしょう。
問題なのはそのように立てられた創業計画が、本人のものとなっていない場合です。
創業時に専門家の手を借りても、実際に借入を受け事業開始後に返済を行っていくのは創業者自身です。創業において最も重要な創業計画を人任せにして本人事としていないようでは、事業の継続に対する本気度が疑われることになります。
面談時、創業計画について自分の言葉として説明できないと、審査落ちにつながりやすくなります。
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⑤現地調査で失敗するケース
創業融資の審査では、ほぼ必ず現地調査が行われます。
営業所・店舗予定地や自宅所在地について、審査担当者が実際に訪問調査します。予告することもあれば、無予告で行うこともあります。
記載されている居所に居住の事実が確認できなければ、申込に対し大いに疑いを持つことは当然です。
それ以外にも創業計画の中で説明を受けた店舗の周辺状況と、現地の状況があまりに違うと売り上げ予想に疑問を持つことになります。
サラリーマン向け居酒屋を駅からそう遠くない地点に開業するとあるにもかかわらず、実際に訪れてみると住宅地のど真ん中であった場合、売り上げ予想に違和感を持つことになります。ひいては創業計画全体の信憑性に関わることもあります。
どうせ見に来ないだろうと高をくくっていると、実地調査でボロが出て審査落ちにつながる可能性が高くなります。
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まとめ
創業融資における、日本公庫の審査落ちでよくあるケース5つを解説しました。
詳細に解説が可能なケースについては別の記事にて更に解説しています。創業融資を成功させる助けとしていただければ幸いです。