【2021年最新版】イギリスの株式投資型クラウドファンディング市場

「株式投資型クラウドファンディング」は「株式投資型CF」や「ECF(Equity Crowdfunding)」などとも呼ばれ、株式投資によるクラウドファンディングのことを指します。

日本でも株式投資型クラウドファンディングを利用して個人投資家から調達を行うベンチャー企業は増加傾向にありますが、グローバルに見るとイギリスやアメリカでは日本以上に株式投資型クラウドファンディングを通じた資金調達が一般的となっています。

中でもイギリスでは、株式投資型クラウドファンディングを利用した企業の中から複数のユニコーン企業も登場しており、注目の市場となっています。

そこで今回は、イギリスの株式投資型クラウドファンディングに関する情報をご紹介します。
※記事の中では、1ポンド=146円、1ユーロ=130円、1米ドル=110円で換算しています。

「株式投資型クラウドファンディング」は、略称「株式投資型CF」や「ECF(Equity Crowdfunding)」などとも呼ばれ、その名称の通り、株式投資によるクラウドファンディングのことを指します。

株式投資型クラウドファンディングの登場人物

株式投資型クラウドファンディングについては、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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イギリスの株式投資型クラウドファンディングに関する制度

イギリスの株式投資型クラウドファンディングの条件は、日本のものと大きく異なります。

調達を行う事業者の条件は、年間の調達上限額が800万ユーロ(約10.4億円)と定められており、日本と比較して、ベンチャー企業の調達可能額に幅があることがわかります。

また投資家側の条件については、投資可能な金融資産に応じて投資上限額が変わる仕組みになっています。日本の「1社あたり50万円」という条件と比較して、個人投資家が投資しやすいことがわかります。

イギリスでは2014年に、株式投資型クラウドファンディングを規制証券業務としてFCA(Financial Conduct Authority:金融行動監視機構)の規制下に置くこととし、大きく2点のルールが設けられました。

1点目の規制: 投資可能な投資家の条件

株式投資型クラウドファンディングを通じて投資を行うことができる投資家の条件は以下になります。

①プロ投資家
②ベンチャーキャピタル
③投資判断能力がある投資家の認定を受けた者
④投資判断能力がある投資家の自己申告した者
⑤富裕投資家の認定を受けた者
⑥投資可能な金融資産の10%以上を非上場会社の株式/債権に投資しないことを自己申告した者

出典: 日本証券業協会「米英における投資型クラウドファンディングの法制度と利用実態」

①②は属性による条件で、当てはまる場合、業者として投資を行えます。
③⑤は資産による条件で、一定の収入や資産を持つ場合に投資を行えます。
④は自己申告です。エンジェル投資家のネットワークに所属していた人やプライベートエクイティへの投資経験者、年商 100 万ポンド(1.46億円)以上の会社の取締役など、一定の要件を持った投資家が自己申告した場合のみ、条件を満たすことができます。

①〜⑤の条件はかなり厳しい条件のように見えますが、⑥の条件であれば、多くの人が条件を満たすことができるでしょう。⑥の条件があることで、誰でも投資できる環境を整えていることがわかります。

2点目の規制: 目論見書発行義務に関するルール

募集総額が800万ユーロ(約10.4億円)以下である場合には、目論見書の作成義務は免除されます。

目論見書の作成義務は免除されますが、プラットフォームは、投資家に提供される情報が正確であること、リスクに関する記載を載せずメリットばかり言及してはならないこととなっています。
また日本と同様に、投資先企業に対する適切なデューデリジェンスを行い、その内容を投資家に開示することが求められます。

出典: UK Crowdfunding “UK Government Ups Crowdfunding without Prospectus to €8 Million – Matching Germany”

イギリスの株式投資型クラウドファンディング市場

イギリスの株式投資型クラウドファンディング市場規模

イギリスの株式投資型クラウドファンディング市場の調達総額は、2012年から2018年まで右肩上がりで推移し、2018年の調達金額を見ると、2013年の13倍近くの調達金額となっています。

株式投資型クラウドファンディングで資金調達を行った会社がイグジットしたことで投資家にリターンが発生し、仕組み自体が急速に普及したのではないかと思われます。

イギリスとEUの市場規模比較

イギリスでは2011年に株式投資型クラウドファンディングが利用され始めたと言われていますが、株式投資型クラウドファンディング調達金額はEU各国と比較すると突出しています。

下図は、株式投資型クラウドファンディングの調達総額の推移です。
2018年時点でイギリスを除くEU各国の調達額は、イギリスの6割程度であることがわかります。

イギリスが突出している要因としては、法規制の違いが大きいのではないかと思われます。
例えばイタリアでは、「資金調達額の10%分はプロ投資家から調達しなければならない」というルールがあります。またフランスでは、デューデリジェンスの手続きや企業の選定基準の開示が義務付けられている等、一見厳しいルールがあります。

出典: EUにおける投資型クラウドファンディング規制

イギリスにおける株式投資型クラウドファンディングの傾向

イギリスで株式投資型クラウドファンディングを行ったベンチャーのEXIT率、倒産率

イギリスでは2011年に株式投資型クラウドファンディングがスタートしているため、投資先企業の「その後」についても、ある程度の傾向が見えています。

上図は、2011年から2020年上期においてイギリスで株式投資型クラウドファンディング、およびベンチャーキャピタル(VC)で資金調達を行った企業のEXIT率、倒産率を示しています。

株式投資型クラウドファンディングを行い、EXIT(投資先企業の株式公開や買収により投資の結果が出ること)に至ったベンチャーの割合は3%で、これはVCから調達した企業の4分の1です。倒産率は、VCのおよそ2倍となっています。

さらに追加の資金調達により会社が成長した割合に関しても、VCのほうが比較的高いことがわかります。

出典: Beauhurst「The State of UK Crowdfunding」

イギリスで株式投資型クラウドファンディングを行った企業の業種傾向

2020年の上期に株式投資型クラウドファンディングによって調達した企業は、VCから調達を行った企業に比べ、下記のような特徴がありました。

コロナ禍でのロックダウンで影響を受けたこともあってか、飲食やアパレルの割合が相対的に高いことがわかります。インターネットプラットフォーム、フィンテック、ITセキュリティなどのIT分野中心であるVCとは対照的です。

出典: Beauhurst「The State of UK Crowdfunding」

イギリスの代表的な株式投資型クラウドファンディング事業者

イギリスにおける株式投資型クラウドファンディング事業者最大手はCrowdcubeとSeedrsで、案件数・調達額ともに9割を超えています。2020年10月には、2社の合併が発表されました(2021年3月現在、合併は調整中となっています)。

1. Crowdcube(クラウドキューブ)

URL: https://www.crowdcube.com/

■設立
2010年8月

■累計調達社数
821社(2019年4月時点)

■登録投資家数
約72万人(2019年4月時点)

■累計調達額
約915億円(2019年4月時点)

■特徴
・調達に要する期間は平均4〜6週間
・平均調達金額は67万ポンド(約9,800万円)で、これまでの最大調達金額はクラフトビール会社BrewDogの1,000万ポンド(14.6億円)
・フィンテック企業「Monzo」が同サービス最速記録となる96秒で100万ポンド(1.46億円)を調達

2. Seedrs(シードル)

URL: https://www.seedrs.com/

■設立
2009年3月

■累計調達社数
1,288社(2021年3月時点)

■累計調達額
約1,606億円(2021年3月時点)

■特徴
・2020年のデータ
L 資金調達成功率は85%
L 最大調達金額は1,000万ポンド(14.6億円)
L 1度の調達で仲間になった最大株主数は5,000人以上
・自社でセカンダリーマーケット(流通市場)を持っている
→株式保有者はいつでも市場価格で売却することができる

3. SyndicateRoom(シンジケートルーム)

URL: https://www.syndicateroom.com/

■設立
2013年9月

■累計調達社数
220社以上(2020年8月時点)

■累計調達額
約380億円(2020年8月時点)

■特徴
・投資家主導の調達フロー
→経験豊富なエンジェル投資家等がリード投資家となり、デューデリジェンスやバリュエーション等の条件交渉を行った上で投資を行う
・リード投資家の投資後、決定した条件に基づいて他の投資家は投資機会を得る

まとめ

イギリスでは既に株式投資型クラウドファンディングで調達したベンチャー企業の上場事例や買収事例があり、実績のある資金調達手段と認知されているため、日本以上に資金調達の選択肢として普及しています。

日本でもそう遠くない将来、株式投資型クラウドファンディングが資金調達の選択肢として広く認知され、調達する企業の中からユニコーン企業が登場するようになることを期待しています。