【起業家向け】株式投資型クラウドファンディング(ECF)で資金調達する5つのメリット・デメリット

【起業家向け】株式投資型クラウドファンディング(ECF)で資金調達する5つのメリット・デメリット

本記事ではベンチャー企業・スタートアップの起業家・経営者向けに株式投資型クラウドファンディングの概要、メリット・デメリット、歴史、よくある質問などをまとめています。

目次

株式投資型クラウドファンディングとは?

「株式投資型クラウドファンディング」は、別名「株式投資型CF」や「ECF(Equity Crowdfunding)」などとも呼ばれ、その名称の通り、株式投資によるクラウドファンディングのことを指します。

なお、クラウドファンディングとは、群衆であるクラウドと資金調達を意味するファンディングを用いた造語であり、一般的に新規成長企業等があるプロジェクトを行うために必要な資金を、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ集める仕組みをいいます。

クラウドファンディングは、様々な枠組みが存在し、投資型(株式やファンド持分を取得する)の他、購入型(製品・サービスを受け取る)、寄付型(寄付として資金を提供する)等があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。

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日本証券業協会のホームページでは、株式投資型クラウドファンディングを「非上場株式の発行により、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を集める仕組み」と定義しています。

まず初めにその「仕組み」を見ていきましょう。

株式投資型クラウドファンディングの仕組み

ストックオプションには、様々な形態があります。ここでは、その性質毎に説明していきます。実際には、これらの条件を色々と組み合わせながら、狙った効果の実現を求めていくこととなります。

株式投資型クラウドファンディングの登場人物

株式投資型クラウドファンディングにおける登場人物は以下の3つです。

株式投資型クラウドファンディングの登場人物

①資金を調達する「企業(発行者)」
②資金の出し手である「一般投資家」
③両者をつなぐ「ECF事業者」

「①企業(発行者)」の対象になるのは、株式が発行できる株式会社かつ非上場の企業です。基本的には将来的な株式公開(IPO)や売却(M&A)などのイグジットを目指している企業が対象になります。

また、株式投資型クラウドファンディングで調達できる金額には1年間に1億円未満という上限が定められているため、創業間もないシードステージの企業からアーリーステージの企業の利用が多いことも特徴です。

実際に株式投資型クラウドファンディングでの募集を行うにあたっては、募集の取扱いを依頼するECF事業者の審査を通過する必要があります。審査に通過後、必要な契約・手続きを行ったのち、ECF事業者へ投資家へ募集の取扱を依頼します。

「②一般投資家」は、一般の個人投資家です。一般投資家が株式投資型クラウドファンディングで出資を行うためには、出資の申込みを行うプラットフォーム上の審査を通過して投資家登録をする必要があります。

ECF事業者ごとに取引開始基準は多少異なりますが、年齢・金融資産・投資経験などの基準を含めた適合性を確認することができた投資家のみ登録することができます。

登録された投資家は、ECF事業者が取り扱う案件への応募が可能になります。

「③ECF事業者」は、第一種少額電子募集取扱業務を行うものとして金融庁に登録を受けた金融商品取引業者です。

株式投資型クラウドファンディングでは株式などの有価証券を取り扱うため、金融商品取引法の規制対象となり、金融商品を勧誘するためには必ず金融商品取引業者として登録する必要があります。

「第一種少額『電子募集』取扱業務」とあるようにインターネットや電子メールなどを通じた電子募集により、調達企業に代わって一般投資家へ企業の状況やリスクを開示して、投資家からの出資の申込を受け付けます。

株式投資型クラウドファンディングの役割

株式投資型クラウドファンディングでの資金調達の流れ

資金を調達する企業の目線で株式投資型クラウドファンディングの流れを解説していきます。

株式投資型クラウドファンディングでの資金調達の流れ

①事前説明・審査

まず、資金を調達する企業は事前にECF事業者から株式投資型クラウドファンディングについての説明や事業についてのヒアリングを受けて、審査を行ううえで必要な契約を締結したのち、ECF事業者へ審査の申込を行います。

審査にあたっては、事業内容のプレゼンテーションなどに加え、定款や登記簿藤本、事業計画や資本政策などの書類を提出するのが一般的です。

ECF事業者の審査部門による書類確認やヒアリング、独自調査などを通じて、事業・財務・法務・労務など多岐に渡る審査が行われます。

②契約・手続き

審査を通過した場合は、企業とECF事業者間で募集業務を行うための契約を締結したうえで、新株発行に必要な発行決議を行い、50名以上の者を相手方として有価証券の取得の申込みの勧誘を行うために必要となる有価証券通知書を財務局(東京の場合は関東財務局)へ提出します。

必要に応じて、事前に定款変更や株式分割などの手続きも実施します。

③案件ページ作成・公開

また、審査通過以降で、事業概要や計画、リスクや審査内容が記載された個人投資家に開示するための募集ページや契約締結前交付書面(取引に先立ち投資家へ交付する、取引内容・リスク等の重要事項を記載した書面)がECF事業者によって作成されます。

有価証券通知書が受理されると、いよいよ募集ページが公開されます。

案件公開から成立までは大まかに以下のようなステップで進みます。

案件公開から成立までの流れ

①事前開示期間(企業の情報は開示されているが、投資家が申込めない期間)
②申込期間(投資家が申込み可能な期間)
③撤回期間(投資家が申込みを撤回できる期間)
④約定(案件が成立するタイミング)

③の撤回期間は最低8日間(各社の規定により若干異なります)であるため、①の事前開示から④の成立までは早くても2週間程度はかかることになります。

また、募集期間終了後には割当決議を行います。

④入金・手数料支払

約定後にECF事業者から、払込保全金信託を扱う信託銀行を介して企業側へ調達資金が払い込まれます。

その後、企業は株主名簿の書き換えを行い、取扱い手数料をECF事業者へ支払います。

⑤登記・増資完了

払込期日(ECF事業者から振り込まれる日)から2週間以内に募集株式の発行の登記を行います。

株式投資型クラウドファンディングの規制

ここでは株式投資型クラウドファンディングに関する主な規制について説明したいと思います。株式投資型クラウドファンディングを実施する場合は必ず押さえておきましょう。

株式投資型クラウドファンディングでは、法令や日本証券業協会の自主規制規則により、以下のような規制が存在します。

(1)株式投資型クラウドファンディングで、同一の会社が資金調達を行うことができる金額は1年間に1億円未満

ここで注意が必要なのは、株式投資型クラウドファンディングを利用する時点までの1年間でベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの調達金額と合わせて1億円未満まで調達が可能ということです。

例えば、2020年8月にエンジェル投資家から1,000万円、2020年12月にベンチャーキャピタルから3,000万円調達した場合で、株式投資型クラウドファンディングを利用する場合、2021年8月までは6,000万円未満まで、2021年12月7,000万円未満までしか調達ができません。

株式投資型クラウドファンディングで、同一の会社が資金調達を行うことができる金額は1年間に1億円未満

この通算規定については、今後緩和される可能性があります。詳しくは株式投資型クラウドファンディングの今後をご確認ください。

(2)一人の投資家が株式投資型クラウドファンディングで投資できる金額は、1社につき1年間に50万円以下

投資ごとのリスクのキャップをかける、多数の投資家の賛同があることを確保するという投資家保護の文脈で、現在は1社につき1年間に50万円の投資が上限金額となっています。

(3)ECF事業者はウェブサイトを閲覧させたり、電子メールを送信する方法によってのみ投資勧誘が認められており、電話や訪問等による投資勧誘は禁止

ECF事業者はインターネットや電子メールなどを通じた電子募集のみ許可されており、電話や訪問等による投資勧誘は禁止されています。

調達を行う企業に関しては、オンライン・オフライン関わらず、投資家に対して直接株式投資型クラウドファンデイングの投資勧誘を行うことは禁止されています。

これらのうちの(1)の募集金額上限や(2)の投資金額の上限の規制については、規制緩和の議論などもあります。後ほど解説してまいります。

株式投資型クラウドファンディングと他の調達手段との比較

株式投資型クラウドファンディングとその他の調達手段の比較表は以下の通りです。

株式投資型クラウドファンディングと他の調達手段との比較

既存の調達手段と同じ軸で比べた場合の強みは、調達に要する期間と調達可能金額が主なところになります。

その他の調達手法の詳細については以下の記事でご確認ください。

【デット・エクイティ】企業ができる資金調達方法の一覧

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次に、株式投資型クラウドファンディング独自のメリット・デメリットを紹介いたしますので、そちらも併せて参考にしてください。

起業家が株式投資型CFの検討前に必ずチェックしておきたいメリット・デメリット

メリット①1億円未満までの資金調達が可能

メリットの1つ目は1億円未満までの資金調達が可能という点です。

特に数千万円以上の資金調達となると、縁故債などでは難しいことが多く、融資やベンチャーキャピタルなど調達手段が限られてきます。

株式投資型クラウドファンディングは、同じ資金調達でも銀行融資のように過去に重心を置いた企業評価や担保をとるようなことはありませんし、ベンチャーキャピタルのファンドのように償還期限があったり、特定の投資家に多くの権利を握られるということも発生しません。

資金調達手法としてどちらが良い悪いかという話ではなく、状況に合わせて選択したり組み合わせたりすることでシード・アーリー期の財務の柔軟性があがります。

メリット②調達に要する期間が比較的短い

申込から着金までの調達に要する期間が1-2ヶ月と比較的短いのも特徴です。

募集開始から終了までの業界平均は1週間弱となっています。
また、事前の審査は事業者によって異なりますがおおよそ2-4週間、募集終了から入金までは2週間程度かかります。

審査〜入金までの期間

メリット③PR、宣伝につながる

募集期間にECF事業者を通して、多くの投資家に自社のサービスを知ってもらえる機会を創出できるというメリットがあります。

また、募集開始や調達完了などのタイミングで、うまく時事性と絡めて自社リリースを行うことができればPRのチャンスにもなり得ます。

PR支援機能をもつECF事業者も存在します。調達企業のPR支援の実績やどのような業務をサポートしてもらえるのかを事前に確認するようにしましょう。

メリット④中長期的に応援してもらえる

購入型のクラウドファンディングなどでは、商品・役務・特典を提供したら関係性がリセットされてしまうようなケースが多いですが、株式投資型クラウドファンディングでは投資家に株主になってもらうことで、ある種の運命共同体として中長期で応援してもらうことができます。

toCのサービスであれば自社サービスのファンになってもらうこともできますし、toBのサービスではエヴァンジェリスト的にサービスを発信してもらったりすることもできます。また、経営者と株主の距離感次第ではありますが、個人的なつながりから、キーマンの紹介や案件の紹介などにもつながる可能性も期待できます。

メリット⑤客観的なリスク評価が明らかになる

株式投資型クラウドファンディングを実施することで、事業・財務・法務・労務と広く審査されることになります。

一般投資家に案件として提供する観点での審査を実施することで、事業上のリスク事項とその対処法、正しくない・望ましくない処理の存在とその対処法などが明確になり、企業としてあるべき姿へ早い段階で移行することができる可能性があります。

リソースの少ないベンチャー企業が、のちの資金調達時やイグジット時になってのトラブルを防ぐために、早い段階で第三者の審査を入れて、あるべき姿にしておくことは非常に有意義であると考えます。

デメリット①事務手続きコストの増加

個人株主が増えることで、株主総会などの事務手続きコストが増加する可能性があります。

会社を運営する上で、年に1回は定時株主総会を開催する必要があります。また、株主の権利に影響を及ぼす重要事項については、臨時株主総会を開催し、株主合意の下にスピーディーに会社を前に進める必要性もでてきます。

現状の会社法の原則は対面による総会の開催、書面を原則としており、電磁的方法による招集や電磁的方法による議決権の行使などは特定の株主の権利を保護するための例外的な手続きとされています。株主総会を開催する際の招集通知や参考資料の送付を紙で数百人に対して行う場合は、結構な手間になることが考えられます。

ECF事業者によっては、電磁的な方法で株主総会を招集したり投票を受け付けられるような株主同意の取得をしたうえで、専用のWEBツールを提供している場合があります。どのような条件でどのようなサポートが受けられるかを事前に確認しておきましょう。

デメリット②株主属性の問題

個人株主が増えると、その中に上場審査等に影響する属性の株主が紛れ込むリスクが上がります。大手の金融機関は慎重に株主の確認を行いますので、株主が多い案件において意図せず株主が問題になるようなケースが発生する可能性があります。

利用するECF事業者に投資家登録時のチェック体制、定期的なチェック体制(登録後に問題のある株主になる可能性もあるため)、問題のある株主が発覚した場合の対応などを事前に確認しておく必要があります。

デメリット③M&Aの際の障害になる可能性

会社経営に関する条件は会社法の規定や定款で定める以外に株主間の契約で取り決められることがあります。例えば、ベンチャーキャピタルの投資実務では、この株主間の契約を利用して、少数株主であるベンチャーキャピタルが取締役を派遣をしたり、重要事項に対する拒否権を持つことがあります。

また、企業買収(M&A)の意向が発生した場合に備え、100%の株式を買収したいという買い手が多いことに配慮して、一定の条件を満たしていれば全員が強制的に売却することとし、一部の株主が売却を拒否して破談にすることができないなどの取り決めをすることがあります。

株式投資型クラウドファンディングでは、多数の一般投資家が株主になることを想定していますが、経営者や今後の出資者が後から株主間契約を締結したいとなった場合、多数の株主を一つの契約書にまとめて株主間契約を締結するのは実務上難しいと言わざるを得ません。

企業買収のようなイベントが発生した場合、どのように株主間の合意を担保するのか、ECF事業者に確認するようにしておきましょう。

デメリット④必ず成功するわけでない

株式投資型クラウドファンディングでの資金調達が成功する率は業界平均でおおよそ70-80%程度です。

All or Nothing形式のため、目標金額に届かない場合は、1円も入らないことになります。それは、成功報酬を主な収益源としているECF事業者にとっても望むような結果ではないはずです。

1%でも成功可能性をあげるためにお互いに何ができるかを打ち合わせておきましょう。

資金計画に余裕をもったり、カウンタープランを用意することも経営者として非常に重要なことですので、万が一の場合に備えて他の資金調達との合わせ技や代替案なども十分に考えるようにしましょう。

デメリット⑤手数料が発生する

国内の株式投資型クラウドファンディングでは、業界平均で20%程度の手数料が発生する仕様になっています。手数料が出ていく前提で調達計画を作成することにはなりますが、20%の部分の業務でECF事業者に何をしてもらえるのかは、今一度しっかり確認するようにしましょう。

ECF事業者によっては調達手数料の他、審査の手数料や、調達後のツール利用料を徴収している場合があります。特に審査料は、実際に募集に至らなくても発生する可能性があるので、事前に詳細を事業者に確認しましょう。

株式投資型クラウドファンディングを取り巻く環境の変化と今後の動向

国内の非上場株式を取り巻く環境の変化と今後の動向について解説していきます。

非上場株式の取引制度の変化

非上場企業への資金調達の円滑化を目的として、1997年7月からグリーンシート銘柄制度が開始されました。これによりグリーンシート銘柄として登録された会社の株式であれば、一定の制限の範囲内で売買をすることが可能になりました。

しかしながら、新興市場の上場基準の引き下げや、2005年の適時開示義務の導入の影響もあり、グリーンシートは2004年をピークに頭打ちし、以降の取扱銘柄が大幅に減少していたため、2015年より新規の登録は停止し2018年3月に廃止されました。

これにとって代わったのが、2015年5月に創設された、「株主コミュニティ」という制度です。株主コミュニティ制度では、証券会社が銘柄ごとに株主コミュニティを組成し、そこに参加する投資家に対してのみ投資勧誘が認められます。勧誘の対象者が限定されるので、グリーンシートとは異なり、発行会社に適時開示義務などの負担が発生しないのも特徴です。

ただし、現状の株主コミュニティにも課題が存在します。主に以下のような点が指摘されています。

1.証券会社は不特定多数の個人を勧誘できない
2.株主コミュニティに入るためには、運営する証券会社に口座を開設する必要がある
3.銘柄によっては売買が低調ですぐに成立しないため流動性が低い

近年では株式投資型クラウドファンディングで発行された非上場株式流動化の受け皿(セカンダリーマーケット)として、再び注目が高まっています。

非上場株式の売買を巡るトラブルや事件

2000年代半ばから、いわゆる「未公開株詐欺」が社会問題化し、2009年には、被害者がおよそ1,000人で被害総額150億円、被害者が数千人で被害総額が200億円という前代未聞の大型の詐欺事件が立て続けに発生しました。

現在でも毎年のようにいわゆる未公開株を巡るトラブルや詐欺事件が発生しており、高齢者を狙った無登録営業や公的機関を装った詐欺など、その手口がますます多様化・巧妙化してきています。

このような歴史的背景などからも日本国内では非上場株式に対してのネガティブな印象が強く、個人投資家からのリスクマネー流入を阻む心理的な要因にもなっています。

金融庁では、株式投資型クラウドファンディングが詐欺的な行為に悪用されることがないようECF事業者に対して、ネットを通じた適切な情報提供やベンチャー企業の事業内容のチェックを義務付けることで、投資家保護のルールの整備を行っています。

株式投資型クラウドファンディングは、個人投資家による非上場株式の民主化はもちろんですが、こういった非上場株式そのものに対する世の中のイメージの払拭も期待される存在として、投資家保護と金融商品としての魅力を両立していくことが求められています。

注目が集まる個人投資家のエンジェル投資

2012年5月の金融審議会「我が国金融業の中期的な在り方について」において、ベンチャー企業を含む中小企業の財務基盤が脆弱であり、ハイリスク・ハイリターン型のベンチャー企業に対して適切なリスクマネーが供給されていないことが指摘されました。

特に2006年から2012年にかけては、リスクマネーの担い手であるベンチャーキャピタルによる投資額が急激に減少していたこともあり、多くの金融資産を保有する個人投資家によるシード投資の可能性がこの頃から注目され始めていました。

世界のユニコーン企業(時価総額10億ドル以上の未上場のベンチャー企業)の数は500社となりこの2年間で倍増しましたが、その7割をアメリカと中国の企業が占めており、日本のユニコーン企業は4社にとどまっています。

この背景には日本のベンチャー企業の創業初期の資金が自己資金や金融機関融資に依存しており、ベンチャー企業に供給されるリスクマネーの量が少なく、新規創業率の低下や、創業後の成長資金の不足により、経済全体の新陳代謝の悪化を招いてしまうという構造上の問題があります。

実際、日米の過去と現在の時価総額TOP5を比較してみると、日本では経済の新陳代謝が起こっていないことが分かります。

また、日本では諸外国と比較して、個人投資家からのベンチャー投資額が少ない傾向にあります。米国のリスクマネー供給における15%はエンジェル投資ですが、日本では1.5%となっており、その差は10倍近くある状態です。

個人投資家から資金を集める仕組みである、株式投資型クラウドファンディングは、このような溝を埋め、ベンチャー企業のエコシステムを発展させる一翼を担うことが期待されています。

株式投資型クラウドファンディングの誕生

株主コミュニティと時を同じくして、創設された制度が株式投資型クラウドファンディングです。株式投資型クラウドファンディングは、新規・成長企業へのリスクマネーの円滑な供給に資することを目的として創設されました。2017年に最初のECF事業者が登録され、国内での歴史がスタートしました。

株式投資型クラウドファンディングの今後の動向

株式投資型クラウドファンディングに関しては、既に今後の要件緩和の案などが示されているものがいくつか存在します。このセクションではそういった規制緩和案の概要や、業界的な動きなどをご紹介していきます。

①企業の調達上限要件の緩和

2021年2月18日の金融審議会市場制度ワーキンググループで、株式投資型クラウドファンディングだけで1年間で1億円未満の調達を可能とする規制緩和案が示されました。

これまでは1年間以内のエンジェル投資家やVCなどその他の調達も含めた算定方法でしたが、これが緩和されるかたちとなります。

新経済連盟などから、引き続き1億円要件の段階的な緩和の要望も出されており、数億円の調達などが検討される可能性があるかもしれません。

②個人投資家の投資上限要件の緩和

上記と同じく2021年2月18日のワーキンググループで示されたのが、プロ投資家(特定投資家)に限定して50万円の上限を緩和するという方向性です。

一般の個人投資家については現時点で未定ですが、これが実現すれば資金の流通量もさらに上がってくると考えられます。

③エンジェル税制対象の緩和

株式投資型クラウドファンディングで取り扱う有価証券には、普通株式の他に新株予約権があります。

これまで新株予約権型の案件はエンジェル税制の対象となりませんでしたが、2020年末に経産省が2022年度以降の税制改正で、新株予約権型を活用した投資家への優遇措置を設けることについて検討していることを明らかにしました。

④セカンダリーマーケットの誕生

FUNDINNOを運営する日本クラウドキャピタル社が2021年を目標に「株主コミュニティ」制度による流通市場の実現を目指すことを表明しています。

もしこれが実現すれば、個人投資家は株の流動性が改善することになり、株式投資型クラウドファンディングでのプライマリ投資のハードルが下がることになります。

こんな場合はどうするの?実施前に知りたいこと

目標募集金額に達しなかった場合はどうなる?

株式投資型クラウドファンディングでは「All or Nothing形式」での募集になるので、目標募集金額に到達しなかった場合は、そこまで集まったお金も手に入りません。

成立しなかった場合、調達に係る手数料も発生しませんが、その他審査手数料や手続きで発生した実費がある場合は、その分の負担が必要になります。

目標金額を超えた場合、上限金額に達した場合はどうなる?

株式投資型クラウドファンディングには「目標募集額」と「上限募集額」という二つの金額設定があります。前者は、成立するために最低限必要な目標募集額、後者は当該募集で集められる上限の金額になります。

株式投資型クラウドファンディングの登場人物

成長資金として必要な金額と資本政策をECF事業者とすり合わせたうえで決定します。

目標を超えた場合はそのまま募集が継続され、上限募集額に達した場合は、その時点で募集受付は終了しキャンセル待ち期間に入ります。

企業価値(バリュエーション)はどうやって決めるの?

事業者によって異なりますが、経営者の意思(事業計画)をベースに落とし所を決めることになります。過剰なバリュエーションになると、投資家に嫌厭されるだけでなく、その後の調達も厳しい状態に置かれるため、資本政策とセットで妥当な企業価値を決めていきます。

ECF事業者自身は株式を持たないため、企業価値に関してはフラットなスタンスです。

ベンチャーキャピタルのようにハンズオン支援はあるの?

こちらも事業者によって異なりますが、ハンズイフ型(必要な時に必要な支援を行う)事業者や、ハンズオフ型(支援先企業に任せる)の事業者が存在します。

平均の調達金額は?

業界平均で3,000万円強となっています。
株主数は調達額によって異なりますが、おおよそ一人あたりの投資額が15万円から20万円程度であるので、150人〜200人程度の規模になります。

資金調達を行ったあとに実施すべきことはある?

株主総会など会社法に基づいた株主への対応はもちろんですが、ECF事業者を通じた株主向けの定期的なIR発信などの対応が必要です。詳しくはECF事業者へご確認ください。

株式会社ではないけど募集はできる?

合名会社、合資会社、合同会社、有限会社、個人事業主の方は、株式投資型クラウドファンディングでの資金調達はできません。